どきっ(62) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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■小林敬生「蘇生の刻」


こば1

小林さんの作品には「魚」などが多く描かれていることから、前回のテーマ「ぎょ(魚)」においても紹介しました。作品のタイトルとして「蘇生の刻」というのがありましたので、今回のテーマ「どきっ(刻)」として再度紹介したいと思います。


こば2


木口木版の代表的な作家・小林敬生。1944年に島根県松江市に生まれ、広島県で幼少年期を過ごし、10歳の時に、滋賀県大津市に移り住みます。高校卒業後京都と東京で美術を学ぶ中で、木口木版画の魅力にとりつかれ、その第一人者として高い評価を受けるようになります。木口木版は、堅い木を水平に輪切りにした面(木口)を、銅版用のビュランやノミで彫って版を作ります。従来本の挿絵の印刷技術として発達した木口木版画を、実用性から解放し、独創的な芸術表現の手段として復活させたのが、小林敬生ら幾人かの版画家で1970年代からのことです。木口木版は本来、小画面の緻密な描写に向いた技法ですが、小林は1980年代後半より、版木を10枚以上も繋ぎ合わせ、大変スケールの大きい、ダイナミックな作品を制作しています。小林の作品には、自由に飛翔したり、泳ぎ回る鳥や魚、昆虫などの生き物、所狭しと繁茂する植物、水底を連想させる幻想的な光景が登場します。


こば3

いろいろな版画技法がある中で、もっとも「刻」と言えるのがこの木口木版ではないでしょうか。時間そして根気のいる仕事です。せめて私たちは、ドライポイントで「刻る」ことにしたいと考えています。