修学旅行魚(3)
あの日あの時を忘れない・・・歴史の証人である。
「火気厳禁」の文字がやけに生々しい。
そして・・・「水をください」
多くの子どもたちが犠牲になった。
まるで・・・現代アート。
神も仏も・・・被爆した。
そして資料館を出ようとした時・・・
売店に置かれていた一冊の絵本。
■「トビウオのぼうやはびょうきです」著:いぬいとみこ/絵:津田櫓冬
1954年3月1日、太平洋上でアメリカの水爆実験がありました。そこで何も知らずマグロをとっていた第5福竜丸の乗組員は、「死の灰」を浴びてしまいました。このお話も、1954年 同じ太平洋上で起こったお話です。それは、突然の出来事でした。まるで、空が大火事のような真っ赤な夕焼け、海の水がぐらりと揺れる恐ろしい音がしました。その後、雪のように降りつづける、白いふわふわな粉。トビウオ坊やは、面白がって、その白い粉の上を飛んで歩きました。その後、トビウオの坊やは、白い粉(死の灰)を被った為、強烈な頭痛に苦しみます。医者という医者に診せ、薬屋さんを探すおかあちゃんトビウオ。どうにかして、我が子のこの苦しみを救いたい・・・
柳井(山口県)の町で、あの原爆の閃光を眼にした体験を持つ作者が「核」に対する怒りと抗議の思いをぶつけた作品。だが、いぬいとみこは、決して攻撃抵抗の言葉を連ねてはいない。トビウオの海中生活のすばらしさを語り、弱者である多くの魚たちが理由なく脅かされてゆく不条理を、どこまでもやさしく語る。やさしい言葉だからこそ、怒りの心性がずんずんと伝わってくる。そして、津田櫓冬の絵物語が不思議なほど閑かで美しい青い海を描き出す。絵本の最後は「だれか トビウオの 小さい ぼうやを たすけて やれる ひとは いないでしょうか。」で結ばれている。