魚の光(1)
まもなく、平成18年度が終わります・・・ホタルノヒカリ マドノユキ
などと考えていますと、「魚の光」もあっていいよな・・・なんて思ったものですから。
■ウミホタルVargula hilgendorfii
海にすんでいる小さな生物で、カニやエビ、ミジンコといった生物の仲間(こうかくるい)です。『ウミホタル』は、貝虫類のミオドコーパの1種ですが、体長が2~4mmで、カイミジンコ目と同じ様な機能を持つものです。昼のあいだは海のそこの砂のなかにかくれています。夜になると泳ぎだしてエサをさがします。
エサは生物の肉。おもに生物の死体を食べていますが、ゴカイやイソメといった生物はおそって食べてしまいます。ウミホタルの本体はすきとおったカラにつつまれています。カラは左右2まい。せなかがわでつながっていて、おなかがわからあしを出して泳ぐことができます。タマゴのような形をしているのは体をつつむカラです。カラの中の体にはエビのようなあしが7組と、トゲのあるシッポがあります。「複眼(ふくがん)」とよばれる目を持っています。昆虫の複眼と同じはたらきをしますが、レンズの数が少ないのであまりこまかくは見えないようです。ウミホタルは、とても小さな体ですが心臓をもっています。心臓からおくりだされた血は、体のなかをまわるほかに、カラのうらがわにもめぐっています。体の後ろ半分は食べたものを栄養にするための消化器官です。上唇腺とよばれる部分には、光の元になるものが黄色くすけて見えています。これを海の中にはきだすと、水のなかにある酸素と反応して青い光がでます。ウミホタルは、現在の医療などバイオテクノロジーの分野で研究開発に役立っているそうです。背甲は透明なものから緑色、褐色のものまであり、心臓が発達していて血液の流れる様子がよく見えます。日中は、砂底にひそみ、夜には泳ぎまわり、春から秋にかけては、夜、海岸から海底をのぞくと、青白い光が確認できます。
『ウミホタル』の発光のメカニズムは、ホタル同様の酵素反応で、発光腺というところにたくわえられた発光物質のルシフェリンと、ルシフェラーゼという酵素が、体の外に放出されたとき、水の中で酵素反応をおこし、光を発します。繁殖期のオスはメスに求愛するとき発光しながらメスのまわりを旋回したり、その他、捕食者におそわれたときに強烈な光を発し、相手の目をくらませる発光の目的があります。『ウミホタル』の採集は、豚のレバーや魚の肉などを、空き瓶に入れそれを夕暮れ時にひもでつるして海底に沈め、夜中に空き瓶に入った『ウミホタル』を翌朝引き上げる方法がほとんどです。全世界の海域に分布している『ウミホタル』は、簡単に繁殖します。メスは成熟して脱皮したあと交尾し、そのときたくわえた精子で卵を受精させます。卵はメスの体の中でふ化し、親と同じ形の幼生が生み出されるのです。戦時中は、各地の国民小学校の生徒が、先生に引率され海岸で、ものすごい数の『ウミホタル』の採集を行っていたようです。採集した『ウミホタル』を天日で乾燥させ、夜間ドアのノブの目印にしたり、歩行者がぶつからないようにワッペンを作るのに使ったというお話があります。乾燥した『ウミホタル』をしみこませたのものに水や湿気を加えると発光することを利用したものです。軍事用にと考えられていたようですが、遠方の戦地に運ぶ間に、湿気により、発光が完了し、使い物にならなかったという記録が残っているようです。昔は自然から採取した生物の機能を利用していたというのはちょっと面白いですね。
建物の照明で見えにくいですが、画像の下部分をじっくり見てください。かすかですが、海ホタルが光っています。