ぎょ貝類(5)
■「私は貝になりたい」1958年(昭和33)10月31日22:00~23:45放送
昭和30年代を代表する名作テレビドラマ。赤紙で収集された理髪店の主人が捕虜を上官の命令で刺し殺そうになり、戦争終了後東京裁判にかけられる。そして最後死刑を宣告される。「兵隊に取られる事も無い、そうだ私は貝になりたい」 というくだりが有名。戦争の悲惨を訴えた傑作。第13回芸術祭大賞受賞。
■映画「私は貝になりたい」1959
同名のテレビドラマの映画化。「コタンの口笛」の橋本忍が、自身の原作を自ら脚色・監督する。撮影は「暗黒街の顔役」の中井朝一。岡本愛彦演出、橋本忍脚本、フランキー堺主演。ストーリー自体は橋本のオリジナルだが、当該の台詞の類似などから裁判の結果、遺書部分の原作は加藤哲太郎が「志村郁夫」名義で発表した『狂える戦犯死刑囚』(現在は『私は貝になりたい』と改題して再刊、春秋社)だとされた。そのため、現在は題名·遺書の原作は加藤哲太郎とクレジットされるようになっている。
●フランキー堺演じる主人公のセリフより
「ふさえ、賢一さようなら お父さんは二時間ほどしたら遠い遠いとこへ行ってしまいます。もう一度逢いたい、もういちど暮らしたい・・・・
お父さんは生まれ変わっても人間にはなりたくありません、人間なんていやだ。もし生まれ変わっても牛か馬の方いい。
いや牛や馬ならまた人間にひどい目に逢わされる。どうしても生まれ変わらなければならないのなら、いっそ深い海の底の貝にでも・・そうだ貝がいい。
貝だったら深い海の底でへばりついていればいいからなんの心配もありません。深い海の底だったら戦争もない、兵隊に取られることも無い。
ふさえや賢一のこと事を心配することもない。どうしても生まれ変わらなければならないなら、私は貝になりたい・・・」
■「私は貝になりたい」1994
戦後の平和論争を揺るがしたテレビ史上最大の話題作「私は貝になりたい」のリメイク版。所ジョージ主演の94年版は、夫婦・家族といった新しい視点が加えられたことによって、一人の善良な小市民が戦争に巻き込まれ、時代の犠牲になっていく姿をより生々しく描いていく。主人公・豊松の妻・房江を田中美佐子、豊松と同じ戦犯死刑囚を柳葉敏郎、豊松と房江の息子を長沼達矢、房江の妹を瀬戸朝香らそうそうたるメンバーが揃った。衝撃のラストシーンで見せる俳優・所ジョージの迫真の演技はすばらしい。
■加藤哲太郎 1917年東京生まれ。1940年慶応義塾大学経済学部卒。北支那開発株式会社入社後、応召。野砲兵連隊所属から語学力を買われ俘虜収容所勤務となる。敗戦後はBC級戦犯として絞首刑判決を受けるが、マッカーサー元帥の再審命令で減刑、のち釈放される。1976年病没。










