魚の文学散歩(うぉーきんぐ)再び
■寮美千子「星の魚―Memories of the galaxy」 ここでの一生は ぼくたちが 星の魚だったころ 笑い転げた一瞬と 同じ長さでしかない でも会えたきみに- 天の河を泳ぐ星の魚の物語。恋する心に鮮やかに甦る、遠い銀河の記憶。一瞬の生を受けてこの地上で生きることの輝き、大切な人に出逢った歓びが切ないほどやさしく、美しい言葉に結晶、これは、究極のラブソング。透明感溢れるイラストも寮美千子自身の手によるものです。
■佐藤多佳子「黄色い目の魚」 海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて―。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。
■山吹草太「5つのパンと2匹の魚―詩と短編戯曲集」 1964年山形県酒田市生まれ。1993年コスモス文学新人賞受賞(現代詩部門)。1995年大阪府にて演劇詩人月のひまわりを設立。演劇における詩的表現と実験的創作活動を開始。数十名の門下生と各地で公演を実施。1998年神奈川県川崎市に転居。関東を中心に公演を実施。2003年表現者『なかもとみゆきポエトリー・リーディング』をプロデュース。現代における人間の精神の解放を目指し斬新的な活動を展開中。その活動は文芸にとどまらず各方面から注目されている。
■村次郎「復刻版 忘魚の歌・風の歌」 戦前、「四季」の弟分のような位置にあった同人雑誌「山の樹」で、他の若い学徒詩人たちと活動を共にしながら、しかし戦後は郷里に舞ひ戻り、家業の旅館を継ぐべくそのまま詩の発表を止め隠棲してしまった風変はりな詩人、村次郎(1915-1997本名:石田実)の、これは詩壇に訣別宣言する前の数年間、彼が青森県八戸で心血を注いで編輯刊行した「あのなっすそさえて」叢書に含めた自身の二冊きりの既刊詩集の復刻である(昭和60年 村次郎詩集刊行会発行)。復刻とはいふものの、原本は彼の小学時代からの恩師の手になる孔版印刷。その「総手作り」の表情は、此度の復刻ではすっかり活字となって一新されているが、なんと編輯方針として一旦は直した誤植を再び元に戻したのだという。