ぎょ(279) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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魚の文学散歩(うぉーきんぐ)[13]


だざい1


■「魚服記」(昭和8年)太宰治

父親と二人きりで山奥に住むスワは、子供時代に植物採集に来ていた学生が滝壺に落ちるのを目撃する。また、父親から聞いた仲良しの兄弟のひとりが沼に飛び込んで大蛇になるという伝説を聞いたりして、いつしか水底に強い憧れを抱くようになった。ある晩、酒を飲んで帰った父親に犯されたスワは、滝壺に飛び込んでしまう。気がつくとスワは水底で……。


だざい2


・・・むかしのことを思い出していたのである。いつか父親がスワを抱いて炭窯の番をしながら語ってくれたが、それは、三郎と八郎というきこりの兄弟があって、弟の八郎が或る日、谷川でやまべというさかなを取って家へ持って来たが、兄の三郎がまだ山からかえらぬうちに、其のさかなをまず一匹焼いてたべた。食ってみるとおいしかった。二匹三匹とたべてもやめられないで、とうとうみんな食ってしまった。そうするとのどが乾いて乾いてたまらなくなった。井戸の水をすっかりのんで了って、村はずれの川端へ走って行って、又水をのんだ。のんでるうちに、体中へぶつぶつと鱗が吹き出た。三郎があとからかけつけた時には、八郎はおそろしい大蛇になって川を泳いでいた。八郎やあ、と呼ぶと、川の中から大蛇が涙をこぼして、三郎やあ、とこたえた。兄は堤の上から弟は川の中から、八郎やあ、三郎やあ、と泣き泣き呼び合ったけれど、どうする事も出来なかったのである。・・・


だざい3

■「竹青」(昭和20年)太宰治

貧乏書生の「魚容」は、女房にも軽蔑され、うだつのあがらない毎日を過ごしていた。ある日、郷試受験を決意して女房を殴り家を飛び出るが、空腹のためろくに回答できず落第してしまう。失意の帰り途、空を飛ぶ烏がうらやましく思った途端、「魚容」の目の前にある人物が現れる……。


たざい4

■『「魚服記」殺人事件・太宰治の冒険』目森一喜

昭和七年、故郷の青森に向かう列車の中で燃料商店の番頭を名のる男と会ったことで、太宰は奇妙な連続殺人事件に関わる。一方、現代の金木の町に学生時代の後輩を訪ねた池田と江藤は太宰の未発表作品発見の噂に集まった学者、大物右翼らとともに殺人事件に巻き込まれた。


ジミー

■「ほほえむ魚」著:ジミー

台湾の作家ジミーさんの初めて描いた絵本『ほほえむ魚』。

ぼくは、ぼくだけにほほえむ魚に出会った。魚は、いつもぼくを待っていた。じっと見つめるぼくだけのまなざしを。ぼくは、ぼくだけにほほえむ魚を小さな水槽に入れて、家につれ帰った。「犬のように忠実で、猫みたいに心がかよい、恋人のように愛しい魚」とぼくの生活が始まった。眠ったはずの魚は、水槽ごと緑色に輝きながら、空中を漂ってゆく。ぼくは、あわてて追いかける。魚のあとを追って、真夜中の通りをさまようぼく、幼い頃踊ったダンスのステップを思い出したぼく、木立の中でかくれんぼをするぼく、朝露でズボンが濡れるまで草むらを歩くぼく、緑色に輝く魚といっしょに大海原を仲良く泳ぐぼく…。大海原を自由自在に泳ぎ回って、ぼくは、はっと気がついた。「ぼくも大きな水槽に囚われたちいさな魚だったんだ」と。めざめたぼくとほほえむ魚のその後は・・・