魚の文学散歩(うぉーきんぐ)[12]
■「視えずの魚」明石散人
・・・晴海通り沿いで最も古い築地のKビルで新しい「ゲーム」が始まった。写楽の謎を縦糸に、愛の究極を横糸に織り上げられる超絶エロティック・ミステリー。ヤクザの作法、競馬のテラ銭、真剣賭麻雀から夜の銀座の値段まで、「業界」の秘密もリアルに描き尽くされる。「今現在に我々がいる世界も、実は誰かのイマジネーションの世界かもしれない。これは誰にも否定できない。無論、俺達も何となくそれに気がついている。ずっと昔から気がついている。だから創造神としての神が語られるんだ。・・・
■「黄色い目の魚」佐藤多佳子
マジになるのって、こわくない?自分の限界とか見えちゃいそうで。木島悟、16歳。世界で最高の場所は、叔父の通ちゃんのアトリエ。ずっと、ここに居られたらいいと思ってた。キライなものを、みんな閉め出して…。村田みのり、16歳。鎌倉、葉山を舞台に木島とみのり、ふたりの語りで綴られるまっすぐな気持ちと揺れる想い。
■「ウモッカ」 1997年頃にモッカさん(ハンドルネーム)がインド旅行中に目撃した怪魚です。
名称:ウモッカ (吉田ひであきさん命名) 便宜上ウモッカと呼称されている。
体長:1.5~2m前後 (モッカさんの身長180cmより大きかったとの証言による)
特徴(鱗):背面はパイナップル状の堅そうなウロコに覆われており、その中心には小さな刺が付いている、腹部は柔らかく滑らか。
特徴(頭部):頭部には堅固な鱗は認められず滑らかで爬虫類に類似する。また口中には細かい歯が多数認められた。
特徴(鰭):総鰭類様の足状の鰭を4枚持つ、ただし尾鰭の形状は絵を見るかぎりでは総鰭類のそれとは異なる。また背びれはチョウザメのように後方にある。
■高野秀行 1966年東京八王子生まれ。早稲田大学探検部に在籍中に書いた『幻獣ムベンベを追え』で結果的にデビュー。タイ国立チェンマイ大学日本語講師を経て、辺境作家になる。
(モットー)誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も知らないものを探す。
そして、それをおもしろおかしく書く。2006年「小説すばる」(8月号)にて、新連載「怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道」がスタート。
■第4回より
・・・恐竜は、ほとんど骨の化石しかないから外観は想像できない。そこで欧米の科学者がヨーロッパに古くから伝わる竜=ドラゴンのイメージを当てはめたので、あんなにおどろおどろしい姿になってしまった。しかし、実際には世界中で恐竜の羽毛の化石がどんどん発見されていて、今では鳥類みたいな羽毛に覆われていたと考える方が合理的とされている。でも、欧米の科学者は納得しない。彼らはキリスト教徒だから、聖書に記されていない動物はこの世に存在してはいけないという考えに縛られているからだ。・・・
■第7回より
・・・喜び勇んで降り立ったカルカッタ空港で、まさかの入国禁止命令が出た。三年前にインドから強制退去させられた時のデータが残っていたらしい。・・・
■高野氏談 専門家の先生に聞いたんですが『ウモッカ』のすごいところは、古代にもこの魚に似た生き物は見当たらないんです。それは、ものすごく大変なことで、シーラカンスでさえ絶滅していたとされる魚が生き残っていたということなんですけど、『ウモッカ』の場合は、それに似た魚もいないということなのですごくハードルが高いわけなんです(笑)で、こんなものが出現してしまうと、進化論に影響を及ぼすのではないかと思っているんですけども(笑)
■挿絵:岡田 里 76年生まれ。96年杉野女子大学短期大学部生活芸術科卒業(現:杉野服飾大学)。03年ギャラリーハウス マヤ 装画を描くコンペVol.3 平川彰氏(幻冬舎デザイン室室長)審査員賞受賞。銅版画、ペン&色鉛筆で制作。書籍装幀、雑誌挿絵、パッケージ等を中心に活動中。「容姿の時代」( 幻冬舍)、「邪悪な花 鳥風月」(集英社)、 「だりや荘」(文藝春秋 )、「前夜のものが たり」(講談社)。『婦人公論』(中央公論 新社)、『別冊文藝春秋』(文藝春秋)、『小説推理』(双葉社)、『 小説すばる』(集英社)挿絵連載中。