昨年の第2回「すくらんぶる展」の会期中、会場の彩りのために以前より造り貯めてきたペットボトル工作による蝶を持ち込んだ。教え子たちは予想以上にその美しさに驚いた。ペットボトルで造ったということすらわからなかったようである。芸術の専門的分野にすすんだ彼らは、すっかり身近な素材から遠ざかってしまっている。私たちが美術に興味関心を持つようになった原点にもう一度もどる必要がある。芸術は特別なものでも一部の人間のものではない。もっと身近で、生活の中に息づき、豊かな日々を過ごすために多くの人々に愛されるものでなければならない。
そう言えば、陶芸の道にすすんだ教え子が第1回展に蝶の絵付けをした花器を出品してくれた。なかなかの作品で、今でもその愛らしさは印象に残っている。そこで第3回展の共通アイテムとして「蝶」を提案し、教え子たちの賛同を得たのである。
そもそもペットボトル蝶を考え付いたのは、小学校での図工実技研修を依頼されたことに始まる。当時、リサイクル・アートが広く実践されており、しかし、様々な素材の接着や展示・保管などについて、多くの質問が寄せられていた。しかも、環境問題が取りざたされる昨今である。そこで、ゴミを出さず、しかもその美しさにおいていつまでも大切にされる作品づくりを検討した。まずは、ペットボトルのすべてを完全に使い尽くすことを考えた。キャップは「独楽(こま)」にする。注ぎ口のロート状部分は「花」にする。胴体部分は・・・「竹トンボ」の羽根にする・・・という具合である。道具としては市販されている「リサイクルばさみ」が活躍してくれた。そしてある日、ペットボトルのカーブ面の美しさに気付き、折り曲げてみた。弾力のあるペットボトルは、見事に左右にそりあがり蝶の羽根を思わせた。これはイケルと実感、早速リサイクルばさみで蝶をカットする。予想通りであった。着色は各色を試したが、蛍光スプレーがもっとも美しく仕上がった。