さらに童謡「蝶」の原典を探ってみますと・・・
江戸の百科辞典『倭訓栞』の「てふ」の項に、蝶が日本各地において呼び名が異なることを挙げた上で、『天寶遺事』の「てふてふとまれ、菜の花にとまれ、なれもとまらば、我もとまらん」という童謡が流布したという記事をひき、「粉蝶を放ちて、その止る所に随て幸なるは唐明皇の故事なり」として、その歌は古意を得ている。
とありますので、このあたりが原典ではないかと思われます。
さて「童謡」は「わざうた」と呼ばれ、自然発生的に子どもたちの間
で広まる歌謡は時代の禍福を予言する「謡諺(ようげん)」の一種
として恐れられたようです。
蝶は東アジアではタブー視されてきたという背景もあり、蝶に関する
童謡の流行は特別視されてきました。そのことを知っていたであろう
「倭訓栞」の編著者は中国の故事にあてはめて、政権の持続を願う
めでたい歌であると解釈したようです。
画像は本文に関係ありませんが、「きんぎょそう」の
マダムバタフライという品種です。