《滋賀県野州町》本藍染め師の森義男さんが住んでいる。染屋に生まれて30年、4代目の本藍染め師として、澄んだ青を求め続けている。本藍染師の森氏は言う。「藍はきちんと守りをしないと、機嫌が悪くなる」。なかでも冬場、3カ月間かける「すくも」づくりが始まると気が抜けない日々がつづく。良い「すくも」ができるかどうか…。「すくも」によって藍の色も異なる。まず室の中に乾燥した藍の葉を置き、筵をかけて井戸水をかける。藍は少しずつ発酵しはじめる。寒気の厳しい野洲。発酵適温60℃を保つため、湯たんぽを入れたり水を打ったり。手間をかける様は「子供に愛情を注ぐごとく」と言う。また本藍染めは、豊かな野洲の自然によっても支えられている。藍建てにかかせない灰汁は山で育てた椿の木灰を。藍染めした糸や布をすすぐ水は水質のよい地下水を…と、すべて代々受け継がれてきたやり方と素材でそのまま変えずに使う。代用品を使うつもりは全くない。このようにして手をかけて染められた糸や布は野洲の風にゆったりと時間をかけて干され、正倉院の遺品のように何百年も色褪せない、本物の藍染め品となる。時間を経るとともに色が冴えてくるという本藍染め。数十年、それ以上の時を経てその価値がわかる。http://www.westjr.co.jp/news/bsignal/02_vol_26/cont_4.htmlより