《『藍が来た道』著:村上道太郎、新潮社、1989》タデ藍の生葉染が「悲しいまでの空色」だとすれば、エゾタイセイは「メルヘンの水色」パステルカラーの優しい瞳の色でした。(同書より)《『Dictionary of color 』著:A. Maerz、M. R. Paul》パステル"pastel"、それは青系の色、藍の色。woad(Isatis tinctoria)から作られた染料と書いてある。ウォードはインジゴを含む植物で、日本語では大青(たいせい、上記学名のものはホソバタイセイ)である。さらに、画材のパステルはパステル(ブルー)の語源ではないと書かれている。画材のパステルはイタリア語のpastelloが語源で、染料のpastelはフランス語とのこと。Maerzらが注釈を加えるほど一般には英語圏でも語源が曖昧になっているのである。村上道太郎さんの本の中にも、大青がフランス語でpastelであることを記述している。パステルカラーといえば淡い色のイメージがあるが、原義から言えば彩度の低い色で、一般のいわゆるパステルカラーとは別の色である。《青と藍》青は藍からの由来だとする説もある。そのほとんどが藍染によって染め出された。日本人は青を川の水の色として、ヨーロッパ人は地中海のコートダジュールの空の色として、アメリカ人はスカイブルーとして認識している。日本の古代に藍の製法と染色法が中国より伝えられ、奈良時代には藍の染色技術が完成、膨大な染織品がつくられた。また江戸時代には藍色は江戸前の色として、藍の付く色名が多く用いられた。紫は愛しい気持ち(最愛の、最上の)を表す言葉とされ、源氏物語の紫の上もその意味で名付けられた。中国や西洋の皇帝も使った。《四色の房》国技館の土俵の上には、神社を思わせる神明造りの大きな屋根が吊られています。その四隅を見ると、色のついた房が垂れていますが、この色にも由来があるのです。もともと日本の伝統的な色彩は、中国の古代思想「陰陽五行説」の影響を受けています。これは、色、方位、季節など、自然の諸現象を五つに関連づけたもので、例えば色と方角の関係を表せば、青=東・赤=南・白=西・黒=北・黄=中央となります。正面を北として向かって左の東側から青房、南に赤房、西に白房、北に黒房が垂れているのがわかります。ちなみに黄房はなく、中央の土俵がこれに当たります。また、吊り屋根に張り回してある紫紺色の「水引幕(みずひきまく)」は、土俵上で散らす“勝負の火花”を鎮める意味があります。伝統的な大相撲の色使いには、いずれも故実が息づいているのです。(財団法人「日本相撲協会」より)