《天藍石》「Lazuliteラズライト・天藍石」は1795年に命名された鉱物で、青い石を意味するドイツ語 lazurstein ラズールスタインに因む。この言葉自体ペルシャ語の lazhuwardラズワルドに由来するため、こちらを語源とした書もある。古くから知られており、また「Azurite アズライト・藍銅鉱」や「 Lazurite ラズライト・ラピスラズリ・青金石」(どちらもlazhwardが語源)と混同されることが多かったので、原産地がはっきりしない。かつてドイツの勢力圏だったヴェルフェンのザルツブルクでは、昔から水晶や方解石を伴った美晶が出た。おそらく最初に認知された天藍石はここの青い石であろうと言われています。《ラピスラズリ》星の瞬く夜空を連想させる美しい宝石で、最も古くから装飾に使われている石のひとつです。ラピスはラテン語の石、ラズリはペルシャ語の紺碧色に由来します。日本名は青金石といい、古くは瑠璃(るり)と呼ばれていました。仏教の経典では七宝のひとつとされています。ラピスラズリの鉱物名はラズライトといいます。産地が数カ所しかない貴重な鉱物で、変成作用を受けた石灰岩の中に産出します。青色の原因はイオウです。ラズライト中にイオウが過剰に存在すると、イオウは鉄と結びついて金色の黄鉄鉱を形成します。右側の標本の金色部分が黄鉄鉱です。白色の部分は方解石です。黄鉄鉱のみ含んでいるものが重宝されています。古代ローマの学者プリニウスはこの石を『天空の破片』と呼び、神秘的な青は凶事から身を守る石として珍重されました。12月の誕生石としてトルコ石と共に有名です。ただし、結晶はまれで、普通は光沢を持つ粒状のものの固まりです。成分は主にラズライト(天藍石)、ソーダライト(方ソーダ石)、アウイン(藍方石)などで、中には星のように見える黄鉄鉱が混じるものもあります。アフガニスタンのラピスラズリ鉱山は有史以前から知られており、現在も、最良の原石が採れる最大の鉱山です。ラピスラズリは古くは、アフガニスタンの一部にしか採れなかった石で、アフガニスタン北部のバクトリア王国(紀元前256-139年)の都市であったアイ・ハヌムはその集積地であったと推測されています。長らく、唯一の鉱山でしたが、現在では、ロシアのバイカル湖畔やアフガニスタン、シベリア、チリ、アメリカの一部が産出地になっています。歴史上、この石が使われた最初のものとしては、紀元前3000年頃前に作られた墳墓からラピスラズリの装飾品が出土しています。5000年前からアフガニスタンからエジプトまで交易があったことが判ります。交易路は『ラピスラズリ・ロード』と呼ばれていました。 紀元前2500年頃には、現在のイラクのウル遺跡からラピスラズリの装飾品や竪琴の装飾に使われたものが出土しています。また、紀元前1350年頃のエジプトの少年王ツタンカーメンの黄金のマスクに代表されるミイラ・ケースの装飾にも使われました。その他に邪眼を防ぐ意味でアイシャドウとして使われたり、眼病や頭痛の治療薬としても使われました。古代ギリシアやローマでは強壮剤や下剤に使われ、古代中国では化粧品として使われていたそうです。7世紀末から8世紀にかけて日本にも到来していて、奈良県明日香村の高松塚古墳の壁画(国宝)の中で「飛鳥美人」と称されている女性たちのスカートの彩色に使われていることが最近の調査(2004年・春)で確認されています。奈良の正倉院にはラピスラズリを使用した装飾品が保管されています。また、青色の絵の具の材料としても、ラピスラズリは古くから利用されています。外観はくすんだ灰色に近い青色をしていますが、石を粉末にして水で溶くと鮮やかな群青色になります。日本画では群青という岩絵の具に、洋画はウルトラマリンという絵の具に、使用されています。中世のヨーロッパでもこの顔料はウルトラ・マリン・ブルー(海の向こうから来たブルー)と呼ばれ貴重な存在で、この顔料は同量の金と交換されたそうです。ルネサンス期の宗教画では大切な聖母マリアのマントの着色に使われました。ですからウルトラ・マリン・ブルーは聖母マリアを象徴する色なのです。日本でも人気の高いフェルメールの『真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)』のターバンにもこの色が使われています。