《青墨》淡墨で青味を呈する墨のこと、松煙墨。煙媒自体で青く発色するものと、本藍などを用いて青味を出すものとがある。青みがかった美しい墨色で、顔彩の色を生かします。純松煙墨は質はいいが高価なので、一般的には油煙墨に藍を混ぜた青墨を混ぜる。純松煙墨と似たような色合いが出て値段も手頃。青墨は油煙墨よりも粒子が粗く、硯を痛めやすいので高価な硯はあまり向かない。淡墨を作る際は、よく洗った硯で墨を濃くすり、これに少しずつ水を加えながら、混ぜ合わせて薄めていく。この方法だと墨の粒子が分散し、優れた墨色が得られる。画像下段は、奈良・正倉院御物レプリカ「古代墨(青墨)」。青墨の煤は茶系の煤に比べ、その粒子の大きさは10~100倍近く大きい。そのために濃く使うと、粒子は紙の繊維の中に浸透せず、紙の表面に乗っている状態になる。固形墨も液体墨も水溶性で、水の中で良く煤が分散できるように造られている。茶系の細かい煤を使った墨でも、造りが悪くて粒子が凝集して分散していたり、宿墨を使った場合には、煤が紙に浸透せず表具時に散ることがある。青墨の濃い作品を表具する場合は、大きな粒子がさらに凝集して分散していて汚く見える。青墨は淡墨でのみ表具できると考えた方がよい。青墨はできるだけ鋒鋩の細かい硯を使い、より細かく磨り下ろすと、表具できる濃さも高くなり淡墨における透明感も増す。松煙墨は最初茶墨であっても、長い年月の内に青墨化してくる。木の看板に墨で書く場合は油煙墨を使うのがよい。油煙墨は木に浸透して長い年月風雨にさらされ木自体が痩せてきても、文字は浮き上がって残るが、松煙墨で書くと、風雨などにさらされ急激に青墨化し、最後には文字が剥離してしまう。