「水色ともちゃん」は、涙の粒から生まれた。
涙は悲しみの表現でもあるけれど、それを癒す力も持っている。
この漫画は統合失調症の大変さを描いているのに、なぜかクスリと笑えてしまう。それはまるで「涙」のあり方そのもののようでもある。
本書で解説を担当している、精神科医・成重竜一郎先生によれば、統合失調症とは「脳が感じすぎてしまう病気」なのだという。
それはもしかすると、感受性の豊かさとか、洞察力の深さと表裏一体なのかもしれない。
歴史に名を残す芸術家や哲学者の中には、今の時代なら「統合失調症」と診断されていた人も実は多いのではないだろうか。
と同時に、本当はみんなの心の中にも「水色ともちゃん」がいて、でもみんな、それをどこかに閉じ込めてしまっているのかもしれない。
本書の中には、こっそり心のポケットに入れておきたくなるような、気持ちを楽にしてくれる考え方がちりばめられている。たとえばこれ。
なにかいいことが少しでもあればその日は「いい日」にしちゃっていいんだ
言われてみれば、その日が「いい日」だったかどうかは、自分で決めればいいことなのだ。僕らはけっこう、この逆をやってしまっていることが多い気がする。
統合失調症とともに生きる人は、僕には及びもつかない大変な経験をしているのだろう。けれども、だからこそ、人の気持ちを思いやれたり、気づけばいろんな人とつながれる力を持っていたり、そういう一面も確かにあると、僕には思える。
「水色ともちゃん」と一緒に一喜一憂しながら、「統合失調症の世界(のひとつ)」を疑似体験できる、とっても素敵な漫画。
当事者の方はもちろんのこと、その周りの方にもオススメしたい一冊。