ご報告が遅くなりましたが、4月25日、エフエム西東京「ウィークエンドボイス」の出演を無事に(?)終えることができました!聴いてくださったみなさん、ありがとうございましたー!
下記番組ブログで内容を振り返ってくださっているので、よければ覗いてみてくださいませ。素敵にまとめてくださっています!
せっかくなので、このブログでも放送について振り返ってみたいと思いますー!
「ウィークエンドボイス」のパーソナリティは、中村麻美さん。西東京を代表するジャズシンガーで、僕も何度もライブで拝見してます!西東京の歌姫ですね。
そして麻美さんの旦那さんが、この番組のプロデューサーでもある中村晋也さん。デザイナーでありながら、ヤギサワベースという駄菓子屋の店主もしている地域の顔。『かがり火』の対談にも登場していただいたので、よかったら読んでみてください!
■「地域と共に生きる駄菓子屋」駄菓子屋店主/デザイナー・中村晋也さん
さて最初の話題は、僕が西東京市に通うようになったきっかけであるクラフトビールの店「ヤギサワバル」について。店主の大谷剛志氏が僕の友達で、彼が西東京の西武柳沢に店を出すということで、そのお手伝いをしているうちに、地域の方々と知り合うようになったのでした。ちなみに「ヤギサワバル」創業の理念に迫る電子書籍も出版されておりますので、よければぜひ読んでみてくださいませ!
その後は、僕が連載記事を担当している地域づくり情報誌『かがり火』について。これについては上記の「放送後記」で詳しく触れてくださっているので、そちらをどうぞ!
そこでも書いてくださっていますが、『かがり火』の創刊はバブルの頃。その時から地域づくりに注目していたわけで、これは本当にすごいことだと思います。「日本で最も地方を歩いた編集者」として知られる創刊者・菅原歓一さんの先見の明でしょう。
その『かがり火』のWEB版である「かがり火WEB」もご紹介いただきました。『かがり火』のバックナンバー記事を順次公開していますので、よかったら覗いてみてくださいませ。そして『かがり火』の年間講読のお申し込みもお待ちしておりますー!
その次は、僕が世話人をつとめている「高等遊民会議」の話題。西東京ではヤギサワバルの大谷剛志氏もメンバーのひとり。そしてヤギサワバルの2階に住んでいる写真家・井口康弘氏は、高等遊民会議のエースです。
その井口氏が「紙マスク制作キット」というものを作っていて、西東京のアンテナショップ「まちテナ」でも販売されています。これがすごい人気だそうです。
この「紙マスク制作キット」については、僕も以前ブログに書きましたので、そちらもよければご覧ください。
人気が出るのはいいのですが、それであんまり働きすぎると、高等遊民会議においてはどんどん肩身が狭くなっていきますので(笑)、そのへんはぜひ気をつけていただきたいと思います。
そしてここで曲紹介。僕が大学を中退してぷーたろーをしていた頃に作った曲「男のロマン」。当時「竹やぶに1億円落ちてた事件」というのがありまして、それにインスパイアされて作りました。よかったら聴いてみてください。
後半からは「杉原学のテレフォン人生相談」へ。僭越ながら、杉原がお悩みに答えるコーナーでした(笑)。
お悩みの内容を超はしょって書くと、「コロナの自粛生活で時間ができると、ついつい余計なことまで考えすぎてしまいます」というようなこと。きっとそういう方はたくさんいらっしゃると思います。簡単にまとめると、次のようなお話をさせていただきました。
「人生は速度よりも方向性の方が大事だと思うので、これを停滞と捉えるのではなく、よりいい方向を模索する機会にできたらいいのではないでしょうか。それは個人も社会も同じ。社会もコロナ以前の方向性で良かったのかと言えばそうではない。むしろ方向転換のよい機会にしていかなくてはならない。頭で考えると、どうしてもありきたりな方に行ったり、損得に縛られたりするし、魂の声が聞こえなくなる。一度頭で考えるのを止めて、魂の声、直観に耳を澄ませてみる。そうして気になること、ワクワクするようなことをどんどんやっていくといいんじゃないでしょーか。そのためにも、とりあえず生き延びましょう!」
という、いいかげんなことをお話させていただきました(笑)。リアルな相談の場では、僕はとにかく相手の話をひたすら聞くのですが、ラジオの限られた時間でそれはむずかしいので、一方的に話すような形になってしまいました。改めてご容赦いただければ幸いです。
実はこの時、僕の専門である時間論の視点からお話したいことがあったのですが、ちょっと込み入った内容になりそうだったので、スルーすることにしました。せっかくなので、それを少しだけ書いておこうと思います。
ベルクソンという、独自の時間論を展開した哲学者がいます。彼によれば、生物の進化には二つの頂点があって、そのひとつは人間で、もうひとつの頂点は昆虫だと言うのです。「何で昆虫と人間やねん!」と思いますよね。それについてはこう説明されています。
昆虫は、外的刺激、つまり環境変化に対して、素早く、躊躇なく反応します。それは条件反射的で、その意味で「あらかじめ行動が決定されている」と考えられるわけです。
それに対して人間は、環境変化に対してすぐに反応しない余地を持っています。端的に言えば「反応が遅い」。そのような「ためらい」は、ときに生存において不利に働くこともあります。しかしその「ためらい」すなわち「時間的遅延」によって、「以前とは異なる行動を取る可能性が開かれる」わけです。そこに人間の進化の方向性を見ることができる、と。そしてその「時間的遅延」によって発生したのが、人間の「心」だと言うのです。
つまり昆虫は「時間間隔を短く切り詰めたシステム」、人間は「時間間隔を延長(遅延)させるシステム」を発展させてきた。それはどちらが優れているというものではなく、生存戦略の違いである、というわけです。
(参考:平井靖史「時間の何が物語りえないのか」『時間学の構築Ⅱ 物語と時間』恒星社厚生閣、2017年)
そう考えると、ある物事を前に立ちすくみ、ためらう人間の姿は、人間の進化の結果であるとも言えるわけです。コロナ禍は、人間の経済活動を著しく停滞させていますが、それは人間の人間らしさを回復させているような気もするのです。
高度成長期に、短期間で経済発展を成し遂げることができたのは、人間の幸福の形を「経済的な豊かさ」に一元化して固定し、「ためらう余地をなくした」ことによってではないでしょうか。でもそれは、ここまで見てきた「人間の進化」に反するものです。むしろ高度成長は、人間の退化によって成し遂げられたと僕は考えます。
もちろんその中で「ためらい」が全くなかったわけではありません。公害などの環境汚染をはじめ、人間が機械のような労働に支配されていくことへの危機感などを表明する声もありました。しかし大きな流れとしては、まるで昆虫のように、条件反射的に「経済発展」を最優先させる社会と人間を作り上げていった、ということでしょう。その負の遺産がいま、この国の人々に重くのしかかっているわけです。
にもかかわらず、相変わらずの条件反射で「経済発展」の一本やりを続ける日本。そこに今回のコロナがやってきたわけです。もちろんできるだけ被害を出すことなく収束することを願っていますが、一方でこれを大きな方向転換の機会にしなければならないとも思います。ここで人間はもう一度、自分たちの進むべき方向を、ためらいながら模索した方がいいと思うのです。
その過程では、これまでに得てきたものよりも、失ってきたものに焦点を当てることになるに違いありません。ひとつ挙げるとすれば、たとえばコミュニティがそうでしょう。「自立した個人」がそのままで幸福になれるのだろうか。「共に生きる世界」なしに人間の豊かさは有り得るのだろうか。そういうことをリアルに考える必要があるのだと思います。僕たちは新しい可能性を開くことができるし、それは人間の「心」によって開かれるものだと思うのです 。
そんなことをぼんやり思っていたのですが、これはもはやラジオで話す内容ではございませんし、人生相談の回答というよりも、僕の個人的なぼやきですね(笑)。相談者のお役に立てたかはわかりませんが、ちょっとでも何かのきっかけになればいいなーと思いました。
そしてコーナーの最後には、伝説の名曲「腹筋20回」を流していただきました。放送後もこの曲への反応がけっこうあって、うれしかったです。よかったら聴いてみてください。そして躊躇なく腹筋20回!よろしくお願いします(笑)。
その後の別のコーナーでは、さらにもう1曲「たまごかけごはん讃歌」も流していただきました。1日の放送で3曲も流してもらえるなんて、僕はすでにミスチルを超えてしまっているのではないでしょうか?あらかじめ言っておくと、紅白はビデオ出演でしかお受けできませんのでよろしく。
そんなこんなの楽しい出演となりました。ウィークエンドボイスのみなさま、聴いてくださったみなさま、本当にありがとうございました!以上、長くなりましたがご報告でした!!