かれこれ数年前の話。
なんとなくテレビをつけていたら、
アニメの「ムーミン」がやっていた。
アニメなんてずいぶん見ていなかったのだが、
ちょっとした気まぐれで見てみることにした。
正直、僕はびっくりしてしまった。
途中の部分だけだが、
ストーリーはこんな感じである。
ムーミンパパの提案で、
「砂の彫刻づくり大会」を
砂浜でやることになった。
みんなに芸術の素晴らしさを
見せつけたい芸術家のフィヨンカさんは、
自分の子どもたちに、
「素晴らしい芸術作品を作りなさい」
と命じる。
本当は好き勝手に作りたい子どもたちだが、
仕方なく「芸術作品っぽいもの」を作り始める。
ミイに、
「好きなもの作ればいいじゃない」
と言われても、
「いや、ママに怒られるから……」
と、仕方なく作業し続ける。
終わりの時間がきて、
さあ帰りましょうとなったとき、
フィヨンカさんは、
「どれが一番か決めないんですか?」 と、
ムーミンパパとヘムレンさんにつめよる。
でもパパたちは、
「そんなこと考えてもいませんでした……」
「みんなじゅうぶん楽しんだし、
それでいいんじゃありませんか?」
納得のいかないフィヨンカさんの後ろで、
子供たちはいつのまにか好きなものを
はしゃぎながら作っていた……と、
こんなお話だった。
なんてことない話だが、
大人視点で見てしまうと、
これはもう人生の縮図そのものである。
フィヨンカさんの子どもたちは、
最後まで言いつけを守ることができずに、
好きなものを作り出してしまった。
そこに救いを感じる。
そしてこれはまた別の話だが、
子どものころにムーミンを見ていたときは、
みんなの調和を乱しがちな「ミイ」の存在は、
ひとつの不安要素だったように思う。
ところが、大人になってムーミンを見ていると、
ミイの存在がむしろ僕らを「ホッ」とさせてくれる。
不思議な安心感を与えてくれるのだ。
その理由も、
実は先に書いたエピソードの中に
含まれているように思う。
アニメとはいえ、
大人向けのドラマなんかより
よっぽど内容があるように思える「ムーミン」。
僕は正直あまり見たことがなかったが、
なるほど大人のファンが多いのも納得である。
今回は登場しなかったけれど、
スナフキンはカッコ良すぎですな。
( 2012年2月13日(月))