まずコーヒーカップを五つ、横に並べる。
そこへインスタントコーヒー、
クリーミングパウダー、砂糖を、
それぞれスプーン二杯ずつ放り込む。
続けてポットの熱いお湯を注ぎ、
牛乳をほんの少し混ぜれば、出来上がり。
これが、僕が子どものころ、
家族のコーヒー(カフェ・オレ?)
を用意するやり方だった。
なぜそうなったのかは覚えていないが、
「僕がつくったコーヒーが一番おいしい!」
と思い込んでいたことだけは確かである。
「それぞれスプーン二杯ずつ」というと、
ずいぶん適当だなあ、と思われるかもしれないが、
それは大きな誤解である。
インスタントなりに、
いちばんおいしい割合を何度も実験した結果が、
この「二・二・二」の法則なのである。
と言っても、それはあくまで
「自分にとってのいちばんおいしい割合」である。
にもかかわらず、
家族からクレームを受けたことはないので、
たぶんみんな気に入ってくれていたのだろう。
実際のところはよくわからないが、
今さら聞くのも野暮である。
あれからもう二十年以上が経ち、
純喫茶で苦めのコーヒーを飲みながら、
「濃いね」なんてつぶやく歳になった。
今でも家でコーヒーを
つくっているのは変わらない。
(2012年4月29日(日))