図書館で少し作業をして、
腹が減ったので家に帰ろうと
歩道を歩いていた。
気候は秋の行楽日和といった感じで、
やさしい風が前方から流れてきていた。
その途中、杖をついて歩く
おじいちゃんとすれ違った。
ところがそのおじいちゃん、
僕とすれ違うやいなや、
「ブーーーー!!」
と屁をかましたのだ。
それだけならまだよかった。
なんとその瞬間に風が向きを変え、
こちらへと吹き始めたのだ。
「これは……!!」
僕の脳裏に浮かんだのは、
「赤壁の戦い」だった。
そう、あの三国志に名高い大戦だ。
「三国志演義」では、
天才軍師・諸葛亮孔明が祭壇を作り、
その季節には吹かないとされていた
東南の風を吹かせることで、
火計に成功したのだった。
あのじいちゃんは、
もしや諸葛亮孔明の生まれ変わりか?
いや、孔明でさえ火を放ったのは
東南の風が「吹いてから」だったはず。
あのじいちゃんの場合は、
屁をかました後に、風の向きが変わった。
孔明以上なのか?
これほどの人物が
なぜ在野のまま存在しているのか。
いや、すでに役割を果たし、
隠居の身となったのか。
……っていうかその前に、
なぜ俺が攻撃されているのか。