「いのち」とはどこにあるのか。
西洋哲学や仏教思想、
そして著者が暮らす群馬県上野村に残る
共同体的な思想を交えながら、
「いのち」のありかに迫っていく本書。
「関係のありようとともに
多様な「いのち」が存在する」
という著者の考え方は、
「存在の空虚さ」という現代社会の課題を
新たな視点から浮き彫りにする。
本来多様なはずの「いのち」のありようが、
貨幣的関係に一元化された結果、
「景気が悪くなると自殺が増える」
といったような悲惨な連動を
生み出しているとも言えるのではないか。
そして「江戸幕府」と「明治政府」の
思想的共通性を指摘する独自の視点も、
私たちの生きる社会を大きく変える
「革命」の意味を再考させずにはおかない。
また、「共同幻想」と「共同想像」の区別も、
僕にとっては新鮮な対比で、
またひとつ新しい視点をもらえた気がする。
「いのち」の捉え方が、社会の形成と
不可分に関わっているということを意識すれば、
僕たちが向かうべき社会の方向性も
少しは見えやすくなるのではないか。
昔の人が感じていた「いのち」とは、
いったいどんな深みを持ったものだったのだろう…
と読む人に想像させずにはおかない、
実に深みのある一冊である。

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