もうそこは通らない | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
いつも通る道が工事中で通れないと、けっこう困る。

しかも迂回する道を知らない場合にはなおさらだ。

こういう場合は別のルートを開拓するしかない。

実は今の日本も
同じような状況にあるのかもしれない。

今まで経済成長路線一本で来てたのが、
突然そこで工事が始まって
「行き止まり」になってしまった。

「まあいずれ工事が終われば、
 この道もまた通れるようになるだろう」

と思いきや、
いつまでたっても工事が終らない。

もうその道に慣れきってしまった人は、
右往左往するばかりである。

右往左往するだけならまだいいが、
「早く工事を終わらせろ!」と
罵声を浴びせる人もいる。

そんな様子を尻目に、
別のルートを開拓しようとしているのが
いまの若者たちなのではないだろいうか。

そして彼らは、既存の道がまた
通れるようになったとしても、
もうそこを通ろうとはしないだろう。

その先にはまた別の「工事中」が
待っていることを知っているからである。

彼らは、経済成長が達成されれば
人間は幸せになれるという幻想を、
そもそも信じていない。

実はそれは国も認めている。

『平成20年版国民生活白書』には、

「所得上昇は幸福度に結び付いていない」

「日本の1人当たり実質GDPの動きと
 満足度の動きは正の相関をしておらず、
 経済成長が日本国民の生活全般の満足度に
 つながらなくなっている」

と明確に書かれている。

もちろん彼らはそんな白書の言葉ではなく、
自分たちの実感としてそのことを
知っているのである。

だが、その道を通い慣れた人にとって、
別のルートを開拓するのはやっかいだ。

それはすごくよくわかる。

なぜなら僕がこれを書いているのは、

「あの道そろそろ復活したかな?」

と思ってそこを通ろうとしたら、
いまだに工事が続いていて、
結局遠回りをさせられてしまった
無念さからである。

いずれにせよ、こんな時代は、
いつも複数のルートをぼんやりと
イメージしておくのが吉であろう。


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