西村佳哲『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」

西村佳哲『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』弘文社、2010年。


自分の「生き方」や「働き方」に
悩んだり迷ったりしている人は、
まず最初に手に取っていい一冊。

魅力的な働き方を実現している
9名のスピーカーの語りを、
著者の西村さんがまとめている。

スピーカーの働き方や考え方は
それぞれに実に多様で、
他の人とは全く正反対のことを
言っていたりもする。

僕がいいと思うのは、
著者の西村さんがそれらの語りを引き出し、
最終的に何も結論を出そうとしないこと。

そう、人にはそれぞれの役割があり、
働き方も人それぞれなのである。

だがもしあえて共通点を挙げるならば、
それは彼らの「働き方」が、
彼ら自身の「生き方」と
分かれていないところだろう。

だからこそ、その語りは結果的に
血の通った名言の宝庫になっている。

どのスピーカーの話に
心を動かされるかは、
本当に人それぞれだと思う。

そして同じ人が読んでも、
読むタイミングによって
それは変わってくるだろう。

最後に、それぞれのスピーカーの語りの中で
心を惹かれた言葉を少し紹介しておきます。

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ヤップ島以来、お金のことを考えていたんです。
お金ってけっこう関係性を切るんじゃないかって。
お金があれば、誰に会わなくても、
口もきかなくても旅が出来る。
(友廣裕一さん)

やりたいことは、
その時々変わっていくと思う。
でも、「やりたい」って思った時の
純粋な感覚を大切にしたいし、
それを圧し殺すようなことはしたくない。
(三島邦弘さん)

昔は、なにか独創的で面白いことを
やらなければならないと思い込んでいた。
大学もそういう教育だったし。
でも、状況が必要としているものを考えて、
その中で自分に出来ることを
素直にやればいいんだ。
(馬場正尊さん)

でも大きくなると組織は腐敗していく。
最初の目的がおかしくなって、
生き残ることが目的のようになってしまう。
(土屋春代さん)

この前、統合失調症をもった
19歳の青年が病棟で大暴れして。
その時に叫んでいた言葉が
忘れられないんですよ。
「ここには人間がいない!」って。
(向谷地生良さん)

一つひとつのことに
しがみつかずに済むように、
自分の中にちゃんと
別のレールを敷いていくことが
本当の自立なのだと思う。
(向谷地生良さん)

想い描ける世界はそれぞれ
違うと思うけど、
その想像を大事にして、
形にすることが、
その人の役割なんと違うかな。
(隅岡樹里さん)

消費者というのは横着やと思う。
いつも「何してくれんねん」
「俺を満足させろ」って。
でもそんな人間関係って、
消費以外の世界では
ありえへんやないですか。
(江弘毅さん)

木は根があって立っていますね。
いろんな根があると思うけど、
その中で一番太くて、
人が立つために大事なのは、
自己肯定感やと思う。
(松木正さん)

バイト先でまかないのご飯を食べながら、
「どうなんのやろ、俺の人生」
っていつも思って。
ただ、もしもう一回チャンスがあったら、
次は努力し続けようってずっと決めてた。
その一回があったんですよ。
(枝國栄一さん)

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