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近代化が始まり、コミュニティの解体が進む中で、
いち早くコミュニティの必要性を説いた
社会学者、マッキーヴァー。
しかし現代のように、
行き過ぎた近代化の反省から
述べられるコミュニティ論ではなく、
マッキーヴァーのコミュニティ論は、
近代化とともにコミュニティも発展してゆく、
というものであり、かなり趣きが違う。
しかし「コミュニティ」と「アソシエーション」という
分類の仕方は現在でも極めて有用な視点を
提供してくれることは言うまでもない。
副題にあるようにあくまで「社会学的研究」ではあるが、
その内容は多分に哲学的なものを含んでおり、
人間とは何か、生命とは何か、
といった本質的命題にまで関わっている。
ところで、平成の大合併が様々な弊害を
もたらしていることが今や明らかになってきているが、
マッキーヴァーは、次のようなことを述べている。
「大コミュニティの果たすサーヴィスとは、
小コミュニティを全うさせることであり、
決してそれを消滅させることではない」。
コミュニティの本質について考えるとき、
やはり一度は目を通しておきたいと思わされる。
ただ、極めて重要な文献ではあるが、
やはり当時の時代背景を反映して、
随所に進化論の影響が見てとれる。
近代化という現実を、あくまで人間とコミュニティの
進歩の過程としてとらえているところは、
現代の私たちから見ればあまりに楽観的に過ぎる。
だがそれについてマッキーヴァーを批判するのではなく、
むしろ彼ほどの聡明な人物でも逃れられなかった、
時代の価値観の強力さということについて、
僕たちは思い至らなければならないだろう。
全編にわたって断定的な文章ではあるが、
彼の中にもかなりの葛藤があったのではないだろうか。