人生を変えた言葉(3) | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
大学を中退したばかりのころだった。

近所の中学校では
夏休みにプールを解放しており、
そこで監視員のアルバイトをしていた。

6人でローテーションを組みながら
受付やそうじ、プールの監視などを行う。

去年も同じアルバイトをしていた
僕よりひとつ年下の男の子がリーダーになり、
いちばん年長だった僕が副リーダーになった。
あとのメンバーはみんな高校生である。

自然と僕ら二人が中心になって
仕切っていく感じになった。

リーダーの彼は吉本NSCに通っており、
ちょくちょくテレビにも出ていた。
たしか、なかやまきんにくんと
同期だと言っていたような気がする(笑)

いっこ年下のくせにため口をきいてくる
ちょっとなまいきなやつだったが、
根がまじめで、自分の人生に対して
真剣に向き合っている感じだった。

いつもならあまり友達になるタイプでは
なかったのだが、不思議と気が合って、
将来のことなどいろんな話をした。

大学を中退した僕のことを、

「お前みたいに、別にイヤで
 大学やめたわけじゃないやつが、
 これからどんなことするんか
 ほんまに楽しみやわ」

と言ってくれたのも彼だった。

彼はそのまま芸人を目指すのかと思いきや、
そこからYMCAに入って、
青年海外協力隊になりたいと言っていた。

すごいことに実際その通りになって、
派遣先の国も決まっていたのだが、
政情不安定のため延期になっていた。
その後のことは知らない。

そんな彼と、いつものように
プールを開ける準備をしてから、
プールサイドに並んで腰かけ、
とりとめのない話をしていた。

日差しがまぶしい真夏日だったが、
早朝はちょっと涼しいくらいだ。


彼「杉原は彼女いてへんの?」

僕「俺まだちゃんと付き合ったことないねん。」

彼「マジで?全然いてそうやん。なんでなん?」

僕「まぁ、付き合ってって言われたり、
  告白されたりしたことはあるけど、
  自分がほんまにほれた女じゃないと
  付き合えへんって決めてるからなぁ。」

彼「そんなんもったいないわ。
  とりあえず付き合ったらええやん。」

僕「でもな、俺はそうやって
  今まで付き合わずに来てんで。
  ここで好きでもないのに付き合ったら、
  今までの自分を否定することになるやん。」

彼「ええやん。今までの自分否定したら。」

僕「ああ…。」

彼「否定したったらええねん、そんなもん。」


目が覚める思いだった。
今までの自分を否定したらいいなんて、
思いもよらなかったのだ。

当時の僕は、過去をかなり美化していた。
いまの自分はダメで、過去の自分はよかった。
そう思い込んでいたから、
いつも後ろばかり振り返っていたのだろう。

そしてきっとそういう自分にも、
そろそろ飽きてきていたのだと思う。

「そうやな、そうするわ。」


そしてその冬に、
当時気になっていた女の子と
はじめて付き合うことになるのである。

別れるときに地獄のような苦しみを
味わうことになるとも知らずに…。
でもそれはまた、別の話(笑)

僕がいかにピュアな人間なのかが
このことからもわかる。(論文風に)


人生を変えるのはいつでも人との出会いだ。
自分の力だけで自分を
変えられたことなど一度もない。

だから僕は、
自分を変えるための努力なんて
しなくていいと思っている。

本当に自分を変えたいと思ったら、
自分を変えようと努力するより、
いまの自分に飽きることの方が
だいじなんじゃないだろうか。

いまの自分に飽きておけば、
人と出会って新しい考え方にふれたとき、
自然とそっちへ行ける気がする。

そして、いまの自分に飽きるためには、
いまの自分をせいぜい満喫しておくことだろう。
もちろん、ダメなところも含めて。

自分を満喫しながら、人と会う。
それぐらいのことで、いいんじゃないだろうか。