闇の中に光を見いだす――貧困・自殺の現場から | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
闇の中に光を見いだす――貧困・自殺の現場から (岩波ブックレット 780) (岩波ブックレット.../清水 康之

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それぞれに自殺問題、貧困問題の現場で働く二人の対談。
現状の対策の方向性、そこに立ちはだかる壁、
今後の希望など、概要的に知ることができる。

【引用メモ】

かつては基本的に企業と家族の
セーフティネットで機能していた社会だったから、
そこで支えられるはずだとされ、企業も縮小し、
家族ネットワークも縮小しているのに、
それに応じた手当てがなされなかった。(p12)

自殺の要因の組み合わせとして、
とくに多いのは、生活苦、多重債務、心の健康です。
入り口は失業は事業不振、あるいは介護など、
それぞれですが、そこから生活苦、多重債務、
心の健康に収斂されていくことが多い。
社会的な問題から暮らしの問題へ、
暮らしの問題から個々人の精神・身体の問題へ、
という流れが実態調査から見えてきていて、
だとすれば、抱えている問題の組み合わせにあわせた
支援のパッケージ化、総合化が必要なのは明らかなのですが、
残念ながら、そえれをやる窓口がない。(p30)

おかしかったのは、産經新聞です。
「所在不明者約九○人戻る
「無断外泊禁止」の張り紙効果?」
という見出しで、三日以上、
無断で外泊したら退寮だと張り紙が貼られたら、
九○人戻ってきたと書いてあった。
その記事をさっと読むと、
いかにも厳しくしたから戻ってきた、
やっぱり甘やかしたらいけない、
みたいな印象を受けるのですが、
冷静に考えれば、外泊していなのなら、
張り紙は見られないのですから、
それを見て帰ってくるはずがない。(p50)

問題は複合的になっているので、
そこをつなぐサポートをする人を育てる必要があるし、
政策の一つの芯として立てる必要がある。
それを誰が担うのかと言えば、
やはり市民的な活動を当事者に
近いところでやってきている人たちが担い、
行政がバックアップする仕組みを
確立していかなければならないでしょう。(p55)

みんなが死ぬという前提を踏まえれば、
社会を測る当然の尺度として、
豊かな死別体験を送られているかどうかというQOD、
クオリティ・オブ・デスが必要なのではないでしょうか。(P56)

最後は認知症の症状もあって、
呼吸器を外さないようにと、
手がベッドに括りつけられていました。
九三歳まで生き、入院するまでは、
この人が一○○歳まで生きないで、
他に誰が生きるんだというぐらいピンピンしていたのに、
殺してくれと言いながら死んでいった。(P56)

社会的な負担ではなく、亡くなった人たちが
生きていた場合の経済効果、生涯賃金を試算したのですが、
その逸失利益は約二二兆円にもなります。
なので、その方たちが生きる道を選択できるように、
仮に二兆円を費やして支援したのだとしても、
単純に言えば一○倍の効果がある。
労働人口減少への対策という意味でも、
それは極めて効率的な社会投資であるはずなのです。(P60)


満足度
★★★☆☆