75 男性乳がんなので、遺伝子カウンセリングを受けてきた
セカンドオピニオンで「遺伝子カウンセリングの受診」を勧められた僕は、今通っている病院の主治医に紹介状を書いてもらい、地元の大学病院の遺伝子診療科を受診してきた。2015.8.31 15:00大学病院に着いた僕は受付を済ませ、指定された「患者支援センター」へ向かった。中にいた女性係員に予約票と診察券、主治医の紹介状を渡すと、廊下を出て隣の部屋にある遺伝子診療科を案内してくれた。ノックをして扉を開けると診察室の小部屋には、私服の男性の先生が一人と女性の先生が二人おられ、それぞれ挨拶される。メインになって喋ってくれたのが男性の先生で、年齢は40歳くらい、温和で優しそうな雰囲気がする。胸のネームプレートは、「血液・腫瘍内科」の所属になっていた。臨床の他に、遺伝子の研究もされているということだろうか。最初に先生は僕にいくつかの質問をされ、その答えをパソコンの電子カルテに猛烈な勢いで入力していった。質問された内容は、概ね以下のとおりだ。○ 僕の家族構成(予め準備していた手書きの家系図を基に、祖父の代まで説明した)○ 僕と家族の既往歴○ 僕の飲酒、喫煙歴その後先生は、パワーポイントで作ったと思われるプリントアウトされた20ページくらいの資料を見せながら、遺伝性乳がんについて丁寧に説明された。だいたい事前にネットで勉強してきたことばかりだったので、先生の説明はスムーズに頭に入っていく。一通り説明が終わると、あとは僕の質問に対して先生がお答えになるという形でお話しをさせていただいた。1 遺伝子検査にはどのくらいの費用がかかるのか?男性乳がんの場合はBRCA2という遺伝子を検査するが、保険診療ではないので20万円くらいかかるだろう。(※ BRCA2だけなら10万円くらいかなぁっと資料をごそごそ探されたが、資料は結局見つからなかった。)2 僕の家族の既往歴などを見てどう思われるか?母方の祖父が「膀胱がん」でお亡くなりになっておられるようだが、いわゆる「がん家系」ではないと思われる。3 この病院で男性乳がん患者の遺伝子検査をした実績はあるか?私の知る限りカウンセリングをしたことはあるが、検査まで進んだ実績は当院ではない。検査は他の病院でするとおっしゃる患者さんはいた。4 遺伝子検査はどのように行うのか。また、判明までにどのくらいの期間がかかるのか?血液を採取して検査する。3週間~4週間のうちには結果が分かるだろう。5 僕は遺伝子検査をしたほうがいいだろうか。BRCA2に異常があったとしても、実際に癌になる確率は7%程度しかなく決して高い確率ではない。お話しをお聞きする限り、たいちさんの病気は遺伝性ではなく散発的(環境要因)な癌であると思われるが、検査をするしないはよく考えて決めてほしい。[おまけ]6 遺伝とは全く関係ないが、いわゆる民間療法や免疫療法(温熱療法や高濃度ビタミンCなど)について、先生はどのような意見をお持ちだろうか?あれは「おまじない」と同じだと考える。免疫力を上げるというが、免疫をかいくぐってできるのが「癌」なのだからおまじない程度の意味でしかない。アメリカでは高濃度ビタミンCなどの開発・研究を大規模に行っていることは知っているが、エビデンスが乏しい。7 食事についてはどう考えるか?赤身の肉を食べると大腸がんのリスクが高くなると言われているが、それ以外はがんと食事に因果関係はないと考える。がんはタバコと酒、特に乳がんは「肥満」がリスク因子となるので、バランスのいい食事を取って太らないように気をつけるべきだ。カウンセリングは1時間の予定だったが20分ほどオーバーしてしまった。先生は、「検査をする、しないに関わらず、不明な点があれば気軽に相談にきてください」と、僕を快く送り出してくれた。時間をオーバーしてまで僕の話につきあってもらった先生に感謝する。お会計は事前に聞いていたとおり、7,000円程度だった。遺伝子検査については僕の中では最初から結論が決まっていて、このカウンセリングを受けて自身の思いをさらに強くした。すなわち、1~2万円くらいなら検査をしてみてもいいが、20万円掛けてやる値打ちが分からない。仮に遺伝子検査の結果が陽性だったとして、すい臓がんや前立腺癌になる確率が高いことが分かっても、できることと言えば早期発見のための検査を頻繁に行うくらいしかできないという。(腫瘍マーカーを検査するくらいでは不足で、前立腺癌なら指を肛門へ突っ込むような検査が必要らしい。)さらに僕の不良遺伝子を二分の一の確率で受け継ぐ子供が僕にはいない。この2つの理由から遺伝子検査は行わないと決めた。ちなみに、アンジェリーナ・ジョリーのように予防的に切除してくれる病院が増えてきているが、これは保険診療からは外れるため、手術代として100万円程度の出費を見込む必要があるとのことだった。