予定の1時間はあっという間に過ぎた。
さすがに癌のことを専門的に研究なさっている先生だけあって、どんな質問にも淀みなくお答えになられた。
医師らしく悲観的なことは言わず、かといって楽観視させるのでもなく、ただいたずらに「再発したらどうしよう・・・」などは、考えても仕方のないことだということを明確にお話いただいたように思う。

また終始一貫して、「病態に応じた現在のガイドラインに沿った標準治療を、加えたり引いたりすることなく粛々とこなすことが一番大切だ」という主張には心から共感できるし、治療を前向きにとらえるいいきっかけにもなったと思う。
がん研究分野の第一人者のご意見だけあって、一つ一つの言葉に説得力があり、重みがあった。
かねてから主治医に聞いてみたいと思っていたことも聞くことができたし、期待した以上の成果を得ることができた。
ちなみに1時間10,000円(税別、保険適用外)だった。

しかし、いいことばかりではない。
今回のセカンドオピニオンを通じて、今の病院の対応や主治医から知らされていなかったことがあったことがわかり、そこに拭いきれない不信感を芽生えさせることになった。

1 セカンドオピニオン用の診療データのこと
これは未確認ではあるが、僕の画像データなどを含んだカルテに近い資料を、事前に病院からセカンドオピニオン先の病院に直接送ってもらっているものだと思っていた。
しかし送られたのは主治医が書いたA4の紹介状1枚だけで、そこに簡単に病理結果が記されていただけのようだ。
どうりでセカンドオピニオン先の病院の受付で、
「画像データが入ったCD-ROMはお持ちになっていますか?」
と盛んに聞かれるわけだ。
セカオピで提供される診療データってそんなものなのだろうか?
もしそれが真実ならば、僕個人のセカンドオピニオンではなく、単に一般論をお話いただいたことになる。

2 病理検査の結果
主治医が書いた紹介状をちらっと見たのだが、そこにはHER2は+3ではなく、+2とあった。
主治医から病理検査のお話があった時に、「HER2は強陽性ですか?」と質問したところ、「YES」という返事をもらったことをはっきりと覚えている。
FISH法で陽性だったとは初めて聞いた。

3  主治医の考え
その他にも「え、そんな話は初めて聞いたよ」と言うことが書かれていた。

○ ハーセプチン投与は1年ではなく2年打つことを考えている・・・
4時間前にお会いした時、ハーセプチンは年内いっぱいだねって言ってたのだが。
○ 予防的に放射線の投射を考えている・・・
主治医からは今の今まで放射線の「ほ」の字も聞いたことがない。

4 主治医の薄さ
今の主治医はがんの専門医ではあるのだが、消化器外科の専門である。
がん研究の大家と比較するのは可哀想だが、やはり持っている引き出しは圧倒的に違い、主治医のことを頼りなく思えてしまったことは事実だ。
そして、今度の新しい主治医はがんの専門医ですらない。

5 病院の薄さ
何度訴えても陥入爪の処置をしてくれない皮膚科医。
カンファレンスという横の連絡がなく、主治医はケモの副作用とはいえ専門外のことについては無関心。
セカンドオピニオンでは、がん研究の専門家ですら事前に乳腺外科の医師に意見を聞いたという話を聞いて、関心してしまった。

以上、少し愚痴混じりに書いてみたが、それでも今の病院を変えるつもりは今のところはない。
僕は標準治療さえ受けられればそれで十分なのだ。
今の病院は自宅から歩いて5分と近く、もし転院などして僕が長期にわたって入院することになったとしたら、妻に大きな負担をかけることになる。
主治医が変わることもあり、今の病院に期待することはあまりないが、もしまた意見が聞きたくなったり判断に迷うことがでてきたら、また専門の先生にセカンドオピニオンを受ければいい。

最後に今回のセカンドオピニオンでご意見いただいたことについて、僕がこれから考えなければいけないことをまとめておきたい。

◯ 遺伝カウセリングの受診
40代でかつ男性乳がんに罹患したということは遺伝子の異常が考えられ、新たながんの発症の可能性があるとのことだった。
今までそんなことを考えたこともなかったが、まずはネットで勉強してみることにしよう。

◯ 再発予防のために放射線を当てること
新しい主治医に相談し、ネットでも勉強してみよう。
気になることはやはり副作用のことと、毎日通わなければいけないのであれば、仕事の折り合いをどうつけるかということだ。
しかし、再発した時に後悔しないためにも、個人的には標準治療でできることはやっておきたい。

◯ 陥入爪手術のこと
2か月前に手術ができるというお話を聞いていれば、間違いなく手術を受けていただろう。
しかし、新しい爪が根元から生えてきており、まだ時間はかかるとは思うが自然に解消するのを待ってみてもいいかなとも思う。
今、爪をはがしてしまうということには抵抗感がある。