684 がん患者のテレワーク
我が社の新型コロナウイルス対策には大きくテレワークと時差出勤があって、新型コロナウイルスが拡大する比較的早い段階から導入を推奨されていた。しかし、そこはサラリーマン。確かに会社通達では推奨されているが、うっかりそこに乗っかると評価に響くんじゃないか?・・・と勘繰ったり、また同僚や部下たちの目を気にしたりして、僕は「その手には乗らない」つもりだった。ましてや僕は幹部職員。本来なら乗客の避難を確認し、最悪の場合は船とともに沈みゆく立場なので、真っ先に敵前逃亡するなど許されるはずがない。物事には本音と建て前があり、この通達は会社の「建て前」だというふうに理解していた。しかしその後、新型コロナウイルスは収束するどころか全国的な広がりを見せ、ついに我が県にもぽつぽつと感染者が出るようになってきた。そして会社の2発目の通達で、まあまあの数の社員が時差出勤とテレワークを導入していることを知り、がん患者が罹患すると重篤化する・・・なんていう当時の報道もあって、僕は3/31からテレワークをすることに決めた。後から知ったことだが、生真面目な我が社の幹部職員のほとんどは、部下がテレワークしていても緊急事態宣言中であってもテレワークをせずに、きちんと会社に出勤をしていたようだ。そう、僕だけは幹部職員であるにも関わらず、敵前逃亡をした。ま、正直なところ、5年目を迎えたステージⅣのがん患者である僕は、自ら戦力外通告をしたので昇進も昇給も凍結されているし、クビにさえならなければ会社の評価なんてどうでもいい。がんで死ぬ覚悟はできているつもりだけど、新型コロナウイルスで死ぬ覚悟はできていない。死んだら一緒じゃないか・・・と思われるかもしれないが、これまで頑張ってきた治療のことなんかを考えると新型コロナウイルスに殺られるのはあまりに無念でしょ。2019年の4月、「5年目を迎えたステージⅣのがん患者は、いつ何があっても不思議ではない」・・・と言って仕事の一線から離れたが、新型コロナウイルスは想定外だったけど、こうなってみるとあの時の判断は正しかったと言えるだろう。僕に顧客や部下がいれば、簡単にテレワークというわけにはいかなかっただろうから。さて、そのテレワークだが、自宅ではほとんど仕事をしなかった・・・というか、できなかった。締め切りのないマイペースでできる仕事だったので大して影響はなかったんだけど、それでもパソコンの電源のオン/オフの時間が勤怠システムに自動送信されるので、必ず9時には電源を入れて18時には落とすという作業と、上司にメールで作業進捗を報告しなければいけないので、1日中寝ているという訳にはいかない。自分の部屋を持たないマンションの我が家では、どうしても大きな食卓にパソコンを置いて作業することになる。しかし・・・。○ 目の前で妻が家事でバタバタしている(掃除、洗濯、炊事など。。。)○ テレビが気になる。。。○ 家の用事を言いつけられる。。。○ 当たり前だけど、机や椅子が事務作業に向いていない。。。※ 男性目線の意見ですいません。妻は妻で僕に気を遣ってイライラしていたはずでしょう。などなど、最初の頃こそ耳にイヤホンを突っ込んで集中しようとがんばってみたけど、3日目にして早々に諦めてしまった。ご存知のとおり僕は何でも諦めが早いほうで、テレワークの当初の終了期限だったGWが明けるまでの1か月強は、「遊ぶ!」・・・と言っても家の中でだけど、もう仕事をしないことに決めた。1度だけ5,000円でビジネスホテルのテレワークプランというものを体験してみたが、快適だったけど、毎日自腹で5,000円を払い続けるわけにもいかない。やがて5月に入ってテレワークの終わりが見えてくると、当たり前だけどすっかり会社に行くのが嫌になっていた。遊んでいても給料がもらえるのだから、そりゃ会社になんて行きたくなくなるだろう。それに僕にとっては、ヅラをかぶらなくてもよかったことが何よりも嬉しかった。以前に、「10日前後の海外旅行に行って嬉しいことは、ヅラをかぶらなくてもいいことだ・・・」と書いたが、これほど長い間一度もズラをかぶらなかったことはハゲてから一度もない。もちろん、テレワークはいいことばかりではなかった。元々メンタルの弱いヘタレの僕は、○ 家の中にひたすら閉じこもる○ 毎日コロナの陰鬱なニュースばかり聞かされる○ 僕にとって唯一のストレスのはけ口だったジムに行けない○ 遊ぶ・・・とは決めたものの、やろうと思っていた仕事が進まないなど、見通しのつかない先行きにすっかり嫌気がさし、夜眠れなくなるほどイライラするようになった。いわゆる「コロナ鬱」である。鬱状態には以前にもなったことがあるから、この状態の自分のことはよく分かる。僕は久しぶりに心療内科を受診してまた抗不安薬のお世話になることになり、今回はソラナックスと、頓服としてデパスを処方してもらった。宝くじが当たったらすぐにでも仕事を辞めてやる!・・・なんて思っていたが、人は食べて寝るだけの生活では心身共に健康ではいられないようだ。テレワークが終わる数日前、新たな会社通達が出た。それはテレワークを我が社の働き方の制度として恒久化する・・・という知らせだった。我が社の場合は全社員無条件に・・・というわけではなかったが、僕には好中球減少症というイブランスの副作用があるので、テレワークを選択することができる十分な資格がある。もちろん、すぐに申請書を書いた・・・が、まだ手元に置いてある。提出期限は7月中なのでまだ考える時間があるのだが・・・。(通勤したいと思う理由)○ 前述したように、生活環境に影響されて仕事が遅々として進まない。○ 通勤がなくなると、日々の行動範囲がコンビニの往復するくらいしかなくなってしまう。通勤時間に本を読んだり、音楽を聴いたり、他人を眺めたり、スタバに寄ったりするってことがまるでなくなる。○ 同僚と会わなくなるので雑談することもなくなり、社内情報に疎くなる。○ 僕がいつまでもテレワークをしていることを不審に思う人が必ず出てきて、僕が癌だと言うことが部署の垣根を越え、僕の知らない人にまで知られてしまうことになる。(テレワークをしたいと思う理由)○ イブランスの好中球減少症の副作用がある。(現に毎クールごとに発熱していた)○ この先体力が落ちて通勤ができなくなった時のために、いつでもテレワークができるようにしておきたい。○ ヅラをつけなくてもいい!○ スーツを着ないので、面倒なYシャツのアイロン掛けをしなくてもよい!○ 通勤時間の無駄がなくなる。○ 社内の嫌なやつと顔を合わせることがないので、人間嫌いな僕にとってはそのストレスが減るのは大きい。さて・・・。テレワークの推奨期間が終わった今、僕は午前7時に出勤して16時に帰る時差出勤をしている。さすがに7時だと会社には僕が一番乗りで、早朝時差出勤を選択している社員は8時~17時の出勤が多いようだ。僕の最寄り駅だったら、朝6時ごろの電車なら座ることができる。それにこの時期でも早朝は涼しいので、汗ダラにならずに快適に通勤することができる。仕事が終わって17時ごろに家に帰れば、それから余裕でジムに行くことだってできる。(※ ジムは自粛していたけど、7月から再開する予定)家に戻ると明日の出勤準備をして、遅くとも23時にはスパッとスマホを切って寝る・・・でないと、5時前に起きるのが不安になる。もともと早寝早起きの生活スタイルに憧れていた僕にとってはちょうどよかった。仕事や家事のこともあって遅寝遅起きである妻との生活時間もうまくズレることになるので、あまり彼女と顔を合わせなくて済むというメリットもある(笑)ただ残念なことに時差出勤は今のところテレワークと違い、新型コロナウイルス対策の暫定扱いなのでいつ終了するか分からないことだ。もし時差出勤が終わるとなると・・・、もう一度テレワークのことを真剣に考えてみようと思っている。