劇団チョコレートケーキ「白き山」 | 気のむくままに

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@駅前劇場


【脚本】古川健

【演出】日澤雄介

【出演】緒方晋、柿丸美智恵、浅井伸治、岡本篤、西尾友樹

初日と千穐楽に観劇しました。

歴史的な事実を参考にしたフィクション。

斉藤茂吉と茂吉の長男、次男、長年の高弟、茂吉の賄い婦である農民の5人で物語が進みます。

主役の斉藤茂吉は、村井國夫さんから緒方晋さんに立ち稽古が始まった時点で交代となりました。引き受け演じきった緒方さん、初日は緊張があった様に感じましたが、楽は後半の台詞「おれは斉藤茂吉だ」という言葉がバシと重みをもってはまり、胸にぐっときました。茂吉を知らないけれど楽には茂吉そのものだなあ感じました。

そう感じて観た、ラストの蔵王の白き山と緒方さんの茂吉のコントラストの美しさは、この作品そのものの余韻となりました。

終戦直後、まだ茫然としていた人々が其々の戦争を思い出し、自分自身を取り戻して前に進んでいく、その過程が素晴らしいなあと思います。
茂吉は日本が勝つと思い込んで戦意高揚の歌を詠むことはな抗わなかったことへの後悔や、敗戦や老いを受け入れることに苦痛を感じていました。それらを受け入れ戦争で3人の息子を失った茂吉の賄い婦である、守谷みや(柿丸美智恵)へ謝ることで次に進み出します。
其々5人の視点で戦争、敗戦を描いている所は劇チョコらしいなあと思いました。

5人の緩急ある内面のエネルギーを感じる芝居が見事。

茂吉の疎開先の農民、茂吉の賄い婦守谷みやを演じた柿丸美智恵さんが、素敵な味を出してます。山形弁で山形の空気を作り、場の空気の変え方や表情も素敵。笑わされ泣かされました。


そして、劇団公演だなあ。

西尾友樹さん、浅井伸治さん、岡本篤さんの3人ががっつり芝居してます。

茂吉の芸術の遺伝子を受け継いだ次男。西尾さんの天才肌の所が生きて、楽しそうに演じていらっしゃいます。

岡本さんは私の大好きな声で、一見やわらかいのに頑固なお弟子さんを。

浅井さんは真っ直ぐな長男を素敵に。3人の個性が合っています。3人のわちゃわちゃした所は楽しいし、この個性豊かな3人の息の合った芝居は見どころです。こんなのはこの作品でしか見られないんじゃないのでは。

絶妙な間と雰囲気の劇団員3人のがっつり絡み合う芝居が見られた事。

笑い泣いたこの作品、ほんと楽しかった。

千穐楽のチケットをとったのには、劇団員3人のアフターアクトが見られるからというのもあります。登場人物として、作演出も本人の5分から10分の1人芝居です。

演じた順に。
【浅井伸治さん】
茂吉の長男で医師の斉藤茂太。彼は今も夜うなされるという。彼の戦地での話は、彼を更に深く知るアフターアクトとなりました。戦地で亡くなった戦友との思い出、哀しさに重なる赤いリンゴの唄と、ラストの表情に‥。
演じた後の優しい笑顔も素敵でした。

【岡本篤さん】
師匠斉藤茂吉を訪ねる前日の自宅。茂吉の長年の弟子です。
師匠の体調を心配しながらも師匠に会える喜びを抑えきれない山口茂吉。キュートな山口茂吉が増し増しで笑えました。
物語になっていて、ラストの落ちにも笑いました。

【西尾友樹さん】
始まる前の準備から笑いの雰囲気が出来上がる。休演日に買い出しをしたという色々な物が運びこまれ。これも‥勝手に可笑しくもなり。
斉藤宗吉が本編でかじったカブを使い味噌汁を作る3分クッキング。料理をしながら話し続ける。笑いの中にどきっとする言葉がこめられている。西尾さんの言葉選び面白いなあ。

11月。駅前劇場にて、「つきかげ」茂吉の終焉が上演されます。