ふじのくに⇄せかい演劇祭2024
ふじのくに(静岡県)と世界は演劇を通じてダイレクトに繋がっている”というコンセプトのもと、毎年ゴールデンウィークになると行われている演劇祭。
ずっと行きたいと思っていましたが、やっと行きました。
4月27日から5月6日まで開催されている演劇祭ですが、日にちによって、演目も、演劇がおこなわれる場所も劇場も違うのですが、私が行ったのは前半28日です。
演劇祭の前半には「友達」「楢山節考」「かちかち山の台所」が静岡舞台劇場公園にて上演されました。
東静岡駅から無料バスで15分くらい、舞台芸術公園へ。
東京ドーム4倍ほどの広さをもつ日本平北の緑濃い園内に劇場や稽古場や研修宿泊棟などか点在。休憩所もあり休憩所カチカチ山にはせかいミニミュージアムもあり、ここでフェス&トークも終演後行われました。
私が観たのは「楢山節考」@楕円堂 「友達」@野外劇場有度の2本です。
芸術劇場公園の中を歩いて奥まで行くと楕円堂がありました。
ラウンジからは富士山が見え、ここで10分くらいの公演をより楽しめるようにとのプレトークを聞きました。
そして階段をずっと降りていくと漆黒の舞台と白木の柱とが一体となった楕円空間の劇場が。他にはない室内劇場で圧倒されました。白木が組まれ高くドーム型の天井から差し込む光は神秘的で、広くない劇場は密閉感があるのに天井が高いので空気は清々しく凛とした雰囲気を感じました。
楢山節考は、1956年に発表された小説を瀬戸山美咲さんが上演台本、演出。
昨年9月に富山利賀芸術公園で上演されています。利賀村はかなり山奥らしいです。
その時とキャストも一緒、今回は新たにチェロの生演奏が加わりました。
【脚本 演出】瀬戸山美咲
【出演】森尾舞、西尾友樹、浜野まどか
【音楽 演奏】五十嵐あさか
低く響くチェロの生演奏と3人の役者による70分。
語りで進む素敵な芝居でした。
主人公おりんは、70歳を前に山へ行く日を楽しみに生きている。
山深い貧しい集落の因習(70歳になったら棄老するという楢山参り)に従い、年老いた母を背板に背負い、真冬の山に捨てにいく物語。
楢山参りの日まで生きることに、食べ物を調達する事に必死であるし、棄老も他の家族の次に命を繋ぐため。家族はおりんを大切に思い少しでも長く一緒に居たいと思っていて、家族はまだその日でないと言うのに、おりんは楢山参りの日を早めます。
棄老伝説の話なのに強さと優しさがありました。
生きることに必死な所や、家族の身体的にも気持ちも繋がりが近いことは、現代の老々介護や、孤独死などを考えてしまいます。
山へ行く所は生々しく苦しいのですが、おりんが山へいった日次第に雪が降ってきます。おりん1人山へ残った後、皆口々に「雪が降って運がいい」と言います。色んな思いを感じる、雪ですべてを浄化したいような言葉だなあと思いました。
森尾舞さんの演じた老婆おりん。凛とした声は、おりんの強さや命を繋ぐという事を感じたし、西尾友樹さんの息子辰平は、優しさが苦しくじんわり。終盤祈りながら座りつづけるおりんを前に、辰平の語りは息をつく間もないほど引き込まれました。
3人がおりん、辰平、辰平の嫁(浜野まどが)演じながら、他の人も語りで表現するという、かなり演者に力のいる作品だと思います。
研ぎ澄まされた3人の役者の身体の動きと近さに、家族の近さを感じました。
森の中にあり、地下にある楕円堂がこの作品とあっていて、ここで見られて良かったです。