無駄な抵抗 | 気のむくままに

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無駄な抵抗 @世田谷パブリックシアター


【作・演出】前川知大
【出演】池谷のぶえ 渡邊圭祐 安井順平 浜田信也
穂志もえか 清水葉月 盛隆二 森下創 大窪人衛
松雪泰子


散りばめられた伏線と、駅前広場に来る人々の人生が交差して繋がる時に一つではない、複雑な感情が湧き上がった。

前川さんがオイディプス王を下敷きに描いた世界に、ギリシャ神話を、野外劇場を思うようなセットがとてもあっていた。
又通過する電車の音やコロスとして存在する人々に、抵抗する哀しさを感じながら観てました。

運命と自由意志がテーマだということでした。

何かに抵抗しながら生きる人々。

止まらなくなった駅に電車を再び止めようとするカフェの店長。なにも表現しないことを表現だと言う大道芸人など‥

池田のぶえさんが演じた芽依は、かつて同級生に言われた「あなたは人を殺す」ということばに、抗いながら生きてきた。慎重に。

オイディプス王を下敷き、ということだったので、後半、芽依の因縁は想像がついてくる。  

近親相姦、父殺し、運命。引き寄せ合ってしまう複雑な人間関係が見えてくる。 

結局彼女は、全て事実を知り、母とも、自分とも関係を持ち、抑圧していた父を殺そうと決意する。そのことによって、周りも含めて新たな苦しみも生じることも予想されるが。

「あなたは人を殺す」という言葉に抵抗できなかった?いや、結局、自分の意志で決めたならそれは抗えなかったことにはならないのでは。そんな風に思った今に繋がる終わり方でした。


実社会で色々感じるコロナ禍以降の変化を、なんとなくここでも感じました。
コロスとして存在する時の人物に、心を固くしているように感じ、感情の動かなさが哀しく怖くもあったのですが、道化師は最大のコロスだったのか‥と思った時、観客もコロスになっているような気がしました。


最近、あーそうだよなあ。ここで何かおこすことが新たな苦しみを伴うとしても大事だよなあ。と演劇を見て思うことがよくあるのだが、といって1歩を踏みだす勇気まではいかない。

でも、その気持ちを感じるだけでも意味があると思う。言い訳かなあ。

前川さんの脚本の面白さ、キャストの面白さ。イキウメ公演ではないけど、イキウメの5人がそろった作品。
アフタートークも面白かったです。大窪人衛さんは、舞台では若くみえるけど、トークで実年齢がやっと納得。