【脚本 演出】小沢道成
【出演】八乙女光、伊勢佳世、長井短、内村颯太、ぎたろー、竪山隼太、篠井英介
小沢さんの作ということでチケットをとりました。
篠井英介さん、伊勢佳代さん、竪山隼人さん、ぎたろーさんというキャストも後押ししました。
めくるめくめぐる、バグの日常───
かわるがわるかわる、煌然の世界──
公式の作品紹介↑
2019年『Indigo Tomato』(小川香さん演出)以来のグローブでした。
再演の決まっている「我ら宇宙の塵」も美しい美術、演出でしたが、今回もLEDディスプレイを使った美術、演出は美しく、テクノロジーとアナログ表現を融合した小沢さんならではの世界が立ち上がっていました。
又登場人物がカメラを構え、ディスプレイにカメラ映像を映し出す演出もありました。カメラ映像を取り入れた演出は、表情をアップにしたり、主人公春翔がビルの上から下を眺めているのを後ろから映したりと、違う視点からだったり、客観的に見られたり作品を豊かにする演出でした。
又パペットの使い方が今回も上手いです。
美術はアンティーク調で、それが夢の中の出来事の様に思えたりするのですが、主人公春翔の日常はリアルで理不尽で苦しくて。
青年春翔のとある1日に、過去の春翔の出来事が差し込まれていきます。多彩で1日の出来事という気がしなかったけど、最後考えると1日でした。
春翔は「おかしい」言われ悩み、
自分で選ぶように何度と言われ、その都度選択していくのですが、上手くいかず悪い方へと事が流れてしまう。
確かに人より不運な気がします。
不運が重なり、苦しみ選ぶことが出来なくなる。
ある日2本のネクタイを手にとり動けなくなってしまった春翔の姿から物語が始まったのですが、人は毎日選択しながらでないと生きられない。選んだ道を踏み締めながら。
生きづらさを抱えた青年にとことん寄り添った物語だと思います。
この先具体的な内容に触れています。
その春翔の唯一の理解者であり、ずっと寄り添っていたのが優しい兄。
兄は、春翔の就職祝いにネクタイを贈ります。そして後日、就職祝いにと食事の待ち合わせをした日に兄は事故に巻き込まれて死んでしまいます。兄が選んだ2つの店から選んだのは春翔。
その時に春翔の思考は停止してしまいます。
その思考の停止の表現の仕方が、淡々と日常の通勤を無言で繰り返す表現。
春翔が最初に手にしていた2本のネクタイの1本は兄のプレゼント。
春翔のとある1日には、常に兄が側にいたのですが、あー兄はあの日にはもういなくなってたな。あの兄は春翔の心にいたんだな。とかなり最後に繋がりました。
どうりで‥。
小さい頃、うさぎの死を経験した春翔。この時うさぎの亡骸を川に流し、皆におかしいと言われた春翔。
兄の死。
そしてとある1日の最後に、バスを待っている時に知り合った年配の女性絹代さんの死に立ち合いい、春翔の感情が再び動きだしたのですが、その時に春翔が言った言葉「重いな‥」がずしっと残りました。
春翔は命の重さ、生きる事の重さを、最後に心から感じたのかなと思います。
舞台ならではの面白さが沢山つまった作品。
なんだか思い出すともう一度見たくなりました。
7人の役者さんは出ずっぱり。7人のチームワークも見どころです。
八乙女さん以外は1人何役も演じます。
篠井英介さん、圧巻で歌もあり。竪山隼太さんも目が離せません。