気のむくままに

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観劇日記の様になってますが、気になりましたら、読んで頂けますと嬉しいです。

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世田谷パブリックシアターで上演された、長塚圭史演出、佐藤隆太主演の「 GOOD善き人」そして、1週間後にNTLiveバージョンを観てきました。

NTLiveは 演出:ドミニク・クック 出演:デヴィッド・テナント、エリオット・リーヴィー、シャロン・スモール


この作品、初演はロンドンで1981年だそう。映画にもなっているし、日本でも何回か上演されたこともあるみたいです。


世田谷パブリックシアターの舞台を観て、何かがしっくりこなかったので、そんな時調度NTLive「GOOD」の上映があるのを知りギリギリ見てきました。台詞はどちらもほぼ同じと思われますが、演出が違うと感じ方が随分違うのだなあと思いました。

上演時間も、30分くらいNTLiveの方が短かかったです。


1940年代のドイツを舞台に、善良で知的なジョン・ハルダー教授が、ヒトラーに文献を気にいられ、徐々にナチスにとりこまれて、最後はホロコーストの管理者となるまで。彼には、唯一の親友であるユダヤ人の医師もいました。


過去、色々な演出で上演されてきた作品みたいですが、NTLiveでの作品がとても好みだったので、そこを中心に感じたことを。
NTLiveの方は小劇場での上演だったのですね。舞台の大きさは下北沢の地下B1くらいの大きさでしょうか?
ただ壁の後ろにも仕掛けがあるので、その分だけ大きい感じです。
セットは本当にシンプル。場面転換なしです。
そして、音楽、照明、3人の役者の台詞の応酬のみ。3人の役者で演じたのはこちらだけみたいです。

ハルダーが他の人々と会話をする形で進んでいくのですが、彼以外の登場人物を、もう2人の俳優が、衣装も変えずに演じわけていきます。シャロン・スモールが、母としてハルダーと話していたかと思うと、妻として、又振り返るとナチスの幹部として話している。いやーゾクゾクしました。

ハルダーは現実と妄想の世界を行き来してる所があるので、上手く表現出来ないのですが、ハルダーを取り巻く人が次々に変わる、この観客の想像力も信用する演出が、上手くはまってる気がしました。
状況、人物が、刻々と変わるですが、俳優さんの演じ分けが凄くて圧倒されました。


パブリックシアターの方は、那須佐代子さんが、母とナチスの幹部の二役を、衣装もかえて演じていらして、こちらも上手いなあと思ったのですが、この演出で那須さんが演じるのも見てみたいと思いました。

(他の出演者は1人1役の方が殆ど、衣装も変わるので、登場人物が分かりやすくはあります)


もちろんハルダーを演じたデヴィッド・テナントさんも上手い。普通の人が、世の中の流れに危機感を持たず、何となく過ごしているうちにとんでもないことになっていた…という恐ろしさを表現している話なので、どちらかというと抑えた演技かなと思うのですが、リアリティがあり感情移入しやすかったです。
佐藤隆太さんも良かったですよ。

音響も、さりげなく聞こえる音響が見事でした。心情を表す曲だけでなく、様々な効果音、例えば手紙が届いたと読むシーンの前に、紙の音がしてそれで手紙を表現するとか。


2つの作品を観て、演出の1番大きな違いは、最初から舞台上にバンドの方々がいて、ハルダーの妄想で聞こえる音楽を生演奏していたのと、最後ぎりぎりまで壁の後ろの見えない所で演奏していたこと。
NTLive「GOOD」のラスト。

アウシュビッツでハルダーを迎えたのは、所長?とユダヤ人。壁が空き、見えてきたのは囚人服を着たユダヤ人の演奏者。ハルダーの妄想の音楽でない、現実の音楽です。

アウシュビッツでの現実。ここで、ハルダーがなんとかなると流されて生きてきた結果はこうなっていた…と現実と向き合うことになる。

がつんとやられました。凄い演出だなあと思いました。