~ブログ版 135号~
~人工妊娠中絶に関する最近の動きと避妊について~
晴山仁志
毎年マスメディアから厚労省が集計した日本の出生数の情報が伝達されます。昨年の出生数は、統計史上最少の81万1604人であり、前年より約3万人少なくなりました。しかし人工妊娠中絶に関する情報は少ないように思われます。
毎年、どのくらい人工妊娠中絶が行われているかご存じでしょうか?出生数と同様に、人工妊娠中絶も日本全体で年々減少しています。人工妊娠中絶は2020年1年間に約14万5千件施行されています。これは帯広や苫小牧の人口を下回るくらいの衝撃的な数値です。特に北海道の2019年の中絶率(15~49歳の女性人口千人当たり)は6.9%であり、全国平均(6.2%)よりも多く、東日本では、東京8.4%に次いで2番目に多いです。
人工妊娠中絶は従来、子宮内の妊娠組織をかきだす搔爬法が行われてきましたが、最近はできるだけ合併症が起こらない、身体に負担かけない吸引法に変化してきています。また、手術をしないで、飲み薬による妊娠中絶薬が早ければ今年の末頃に認可されると思います。これは妊娠初期に2種類の経口薬を使用します。妊娠維持に必要な黄体ホルモンをブロックする薬1錠を服用し、36~48時間後に子宮筋層を収縮させて妊娠の組織排出を促す薬4錠を服用します。最近、日本での最終的な治験結果の解析が行われ、2回目の薬服用24時間以内の中絶成功率が93.3%でした。副作用も少なく、軽度であることが確認され、近い将来、中絶方法の主流になると思われます。
様々な背景要因があって人工妊娠中絶を決断すると思われますが、一般的に人工妊娠中絶を受けた女性は、その後長期間、不安、罪悪感、自責の念などの心理的葛藤を抱きながら生きていることが多く、背景に応じた心のケアが必要です。このように人生に多大な影響を与える人工妊娠中絶を避けるために、避妊に関する正しい知識を、年齢、発達段階に応じて学んでおくことが重要です。
避妊効果を示した数値をパール指数と言い、これは100人の女性が1年間で避妊に失敗する数値です。一般的に避妊しない場合は85人、コンドームでは2~18人が妊娠する可能性があります。また不妊手術でも0.5人、子宮内リングでは0.2~0.8人、ピルでは0.29人が妊娠することがあり、どの避妊法でも100%成功する訳ではありません。現時点ではピル、子宮内リング、不妊手術など、女性のライフステージに即した避妊法が勧められます。特に若い女性に勧められるのはピルであり、これは簡便で避妊効果が高く、女性が主体的に避妊でき、生理痛も緩和され、ピル服用中止後排卵が再開して妊娠可能となります。ピルを含めた避妊に関心を持っている方は、担当医に相談しましょう。