大学数学って?[0010] 実数って,ベクトル?・解答編3(ペアノの公理,自然数の公理) | かじきよし

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「数学を楽しむ」「健康」が,私の人生の二大目標です.

 今日も,ありがとうございます.


 「実数って,ベクトル?」今回も,これが主題です.

 実数の定義と性質の概略のみを(論理展開に応じて3つ)紹介しています.
 大学数学って?[0008] 実数って,ベクトル?・解答編1(実数の公理) では,3つのうちの1つ目「実数の公理」を紹介しました.
 そして,大学数学って?[0009] 実数って,ベクトル?・解答編2(実数の公理) では,「実数の公理」から,実数が「線型空間の公理」をみたすことを証明しました.

 今回は,3つのうちの2つ目「ペアノの公理」を紹介します.(「自然数の公理」に相当しますが,そんな呼び方をしている人を知りません.)
 ペアノの公理をみたすものを自然数とよび,
適当に,
自然数から整数を構成し,
整数から有理数を構成し,
有理数から実数を構成すると,
その実数は「実数の公理」をみたすようです.(ペアノの公理を議論の出発点に選ぶと,「実数の公理」は公理でなく,定理になる訳ですね.)
 実数の公理をみたすものは,「線型空間の公理」をみたすことは,

大学数学って?[0009] 実数って,ベクトル?・解答編2(実数の公理)
で見た通りです.

 よって,「ぶっちゃけ,実数はベクトルとみなすことができるというわけです.」

 では,「ペアノの公理」とは何か? 下に紹介いたします.

 

 

 

ペアノの公理1

 

 

 

 

 

 

ペアノの公理2

 

 

 

 

 

 

 


 今回の記事は,松坂和夫『代数系入門』(岩波書店)を参考にしました.

 

 

 

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 今日も,ありがとうございました.


【TeX source text】以下は読まなくても結構です.
 
\documentclass[a4paper,12pt]{jsarticle}
 
\usepackage{amssymb}
\usepackage{amsmath}
 
\makeatletter
\def\mapstofill@{%
   \arrowfill@{\mapstochar\relbar}\relbar\rightarrow}
\newcommand*\xmapsto[2][]{%
   \ext@arrow 0395\mapstofill@{#1}{#2}}
\makeatother
 
\pagestyle{empty}
 
%%%%%%    TEXT START    %%%%%%
\begin{document}
 
\begin{enumerate}
\setcounter{enumi}{1}
\item
\textgt{「ペアノの公理」から出発する方法}
 
 集合 $\mathbb{N}$,ある元 $0\in\mathbb{N}$,
写像 $\sigma:\mathbb{N}\rightarrow\mathbb{N}$ が,
次の「\textgt{ペアノの公理}」をみたすとき,
$\mathbb{N}$ の元を \textgt{自然数} とよぶ.
\begin{enumerate}
\item
 $\sigma$ は単射である.
 
\item
 $0\notin\sigma(\mathbb{N})$.
 
\item
 $S\subset\mathbb{N}$ とするとき,
\[
0\in S\ \text{かつ}\ \sigma(S)\subset S
\Longrightarrow
S=\mathbb{N}.
\]
 
\end{enumerate}
 
\end{enumerate}
 
\bigskip\bigskip
 
\noindent
\textgt{【ぶっちゃけ小話】}
\begin{itemize}
\item
 イメージとしては,次のような感じです:
\[
0\xmapsto{\sigma}
1\xmapsto{\sigma}
2\xmapsto{\sigma}
3\xmapsto{\sigma}
4\xmapsto{\sigma}
\cdots
\]
 大学数学では,0 も自然数に含めるという立場をとることが多いです.
 
 写像 $\sigma$ は \textgt{後継者写像} とよばれます.
 
 $\sigma(n)$ は $n$ の \textgt{後継者} とよばれます.
 
\medskip
 
\item
 (c) は \textgt{数学的帰納法} の公理とよばれます.
 
\smallskip
 
 数学的帰納法とは,次の通りでした:(命題 $P$ に対して,)
 
(I) $P(0)$
 
(II) $P(k)\Longrightarrow P(k+1)$
 
$\Longrightarrow$\
任意の自然数 $n$ に対して $P(n)$ が成り立つ.
 
\smallskip
 
 ここで,$S=\{ n\in\mathbb{N}|P(n)\}$とおいてみましょう.
 
 (I) は,$0\in S$ を表しています.
 
 (II) は,$k\in S\Longrightarrow k+1\in S$ を表しています.
 
 (II) をもう少し言い換えると,$k\in S\Longrightarrow\sigma(k)\in S$ となり,
$\sigma(k)\in \sigma(S)$ ですから,$\sigma(S)\subset S$ となります.
 
 ここで,集合・写像の言葉を復習してみると,
\begin{itemize}
\item
 写像 $f:X\rightarrow Y$ と $A\subset X$ に対して,
$f(A):=\{ f(x)|x\in A\}$ を $A$ の $f$ による \textgt{像} とよびます.
 
\item
 任意の $x$ に対して $x\in A\Longrightarrow x\in B$ が成り立つとき,
$A\subset B$ と表します.
 
\end{itemize}
 
\item
 (a) の「単射」ですが,ここでも,写像の言葉を復習してみると,
 
写像 $f:X\rightarrow Y$ が,
\[
x\neq y\Longrightarrow f(x)\neq f(y)
\]
をみたすとき,\textgt{単射} であるといいます.
 
 待遇
\[
f(x)=f(y)\Longrightarrow x=y
\]
も使えます.(よく使います.)
 
\smallskip
 
 任意の $x\in X$ に対して,$f(x)\in Y$ がただ 1 つ定義されているとき,
$f$ を \textgt{写像} とよぶのでした.
 
 ここで注目したいのは,
「$x\neq y$ だからといって $f(x)\neq f(y)$ にならなければならない」
というわけではないということです.
$f(x)\neq f(y)$ となるときに,特に「単射」とよびます.
 
\end{itemize}
 
 
\end{document}