大学数学って?[0008] 実数って,ベクトル?・解答編1(実数の公理) | かじきよし

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「数学を楽しむ」「健康」が,私の人生の二大目標です.

 今日も,ありがとうございます.


 「実数って,ベクトル?」今回も,これが主題です.

 もう少し詳しく言うと「実数全体の集合は,線型空間をなす」ということです.
(「線型空間」の復習は,大学数学って?[0006] 線型空間とは? にて)

 さらに詳しく言うと,前回の通りです.
 前回は問題編,今回は解答編1です.

 「実数なんだから,当たり前じゃないの?」なんて声が聞こえてきそうですが・・・
(高校までは,当たり前のように使ってきた性質ばかりですね.)

 実際に証明しようとすると,実は実は,かなり奥が深いのです.私もまだ勉強しきれておりません.(当たり前に思えるものほど,奥が深い.)

 まずは,実数の定義と性質の概略のみを(論理展開に応じて3つ)紹介します.
 今回は,3つのうちの1つ目です.

 

 

 

 

 

 

 

実数の公理1

 

 

 

実数の公理2

 

実数の公理3



 今回の記事は,杉浦光夫『解析入門Ⅰ』(東京大学出版会)を参考にしました.
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 今日も,ありがとうございました.


【TeX source text】以下は読まなくても結構です.
\documentclass[a4paper,12pt]{jsarticle}
 
\usepackage{amssymb}
 
\pagestyle{empty}
 
%%%%%%    TEXT START    %%%%%%
\begin{document}
 
\begin{enumerate}
\item
\textgt{「実数の公理」から出発する方法}
 
 次の (a) 四則演算,(b) 順序,(c) 連続 に関する公理をみたす集合 $\mathbb{R}$ の
元を \textgt{実数} とよぶ.
\begin{enumerate}
\item
四則演算
 
 任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対し,$a+b,ab\in\mathbb{R}$ が定義され,
次をみたす.
$a+b$,$ab$ をそれぞれ $a$ と $b$ の \textgt{和},\textgt{積} とよぶ:
\begin{enumerate}
\item
 任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
(a+b)+c
=
a+(b+c).
\]
 
\item
 次をみたす $0\in\mathbb{R}$ が存在する:
 
任意の $a\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
a+0=0+a=a.
\]
 
\item
 任意の $a \in\mathbb{R}$ に対して,
次をみたす $-a\in\mathbb{R}$ が存在する:
\[
a+(-a)=(-a)+a=0.
\]
 
\item
 任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
a+b=b+a.
\]
 
\item
 任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
(ab)c
=
a(bc).
\]
 
\item
 次をみたす $1\in\mathbb{R}$ が存在する:
 
任意の $a\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
a1=1a=a.
\]
 
\item
 0 でない任意の $a \in\mathbb{R}$ に対して,
次をみたす $a^{-1}\in\mathbb{R}$ が存在する:
\[
aa^{-1}=a^{-1}a=1.
\]
 
\item
 任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
ab=ba.
\]
 
\item
 任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
a(b+c)=ab+ac.
\]
 
\item
 $1\neq0$
 
\end{enumerate}
 
\newpage
 
\item
順序
 
 任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対し,2 項関係 $a\leqq b$ が定義され,
次をみたす:
\begin{enumerate}
\item
 任意の $a\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
a\leqq a.
\]
 
\item
 任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
a\leqq b,\ b\leqq a\Longrightarrow a=b.
\]
 
\item
 任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
a\leqq b,\ b\leqq c\Longrightarrow a\leqq c.
\]
 
\item
 任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,
$a\leqq b$ または $b\leqq a$ の少なくとも一方が成り立つ.
 
\item
 任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
a\leqq b\Longrightarrow a+c\leqq b+c.
\]
 
\item
 任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,
\[
0\leqq a,\ 0\leqq b\Longrightarrow 0\leqq ab.
\]
 
\end{enumerate}
 
\item
連続
 
 $\mathbb{R}$ の上に有界な空でない任意の部分集合 $A$ に対して,
$\mathrm{sup}\,A$ が $\mathbb{R}$ の中に存在する.
 
\end{enumerate}
 
\end{enumerate}
 
 
\newpage
 
 
\noindent
\textgt{【ぶっちゃけ小話】}
\begin{itemize}
\item
 和,積,順序に関して,注意しておきたいことがあります.
 
 和,積,順序は,高校までに教わった通りの定義とは限らないということです.
 
 とにかく「和」「積」とよばれる演算と「順序」とよばれる 2 項関係さえ
定義されていれば,高校までに教わったものと異なっていてもよいのです.
その上で,公理さえみたしていればよいのです.
 
\item
 「(c) 連続」に知らない言葉が登場しているという方もいると思いますので,
ここで紹介いたします.
 
 集合 $A$ で「(b) 順序」の i.,ii.,iii. をみたす 2 項関係 $\leqq$ が
定義されたものを \textgt{順序集合} とよびます.
 
 順序集合 $A$ の部分集合 $B$ に対して,$m$ が $B$ の \textgt{最小元} であるとは,
次をみたすことです:「$m\in B$ かつ 任意の $b\in B$ に対し $m\leqq b$.」
 
 順序集合 $A$ に対し,$a\in A$ が $A$ の部分集合 $B$ の \textgt{上界} であるとは,
次をみたすことです:「任意の $b\in B$ に対して,$b\leqq a$.」
 
 順序集合 $A$ の部分集合 $B$ が上界をもつとき,$B$ は \textgt{上に有界} である
といいます.
 
 順序集合 $A$ の部分集合 $B$ の上界全体集合の最小元が存在すれば,
それを $B$ の \textgt{上限}(supremum)とよび,$\mathrm{sup}\,B$ と記します.
 
\item
 「(c) 連続」のどこが連続を表しているのか?
 
 いつになるか分かりませんがいつか,記事にしたいと思っております.
 
 お楽しみに!!
 
\end{itemize}
 
\end{document}