今日も,ありがとうございます.
「実数って,ベクトル?」今回も,これが主題です.
もう少し詳しく言うと「実数全体の集合は,線型空間をなす」ということです.
(「線型空間」の復習は,大学数学って?[0006] 線型空間とは? にて)
さらに詳しく言うと,前回の通りです.
前回は問題編,今回は解答編1です.
「実数なんだから,当たり前じゃないの?」なんて声が聞こえてきそうですが・・・
(高校までは,当たり前のように使ってきた性質ばかりですね.)
実際に証明しようとすると,実は実は,かなり奥が深いのです.私もまだ勉強しきれておりません.(当たり前に思えるものほど,奥が深い.)
まずは,実数の定義と性質の概略のみを(論理展開に応じて3つ)紹介します.
今回は,3つのうちの1つ目です.
今回の記事は,杉浦光夫『解析入門Ⅰ』(東京大学出版会)を参考にしました.
- 解析入門 (1)/杉浦 光夫
- ¥2,940
- Amazon.co.jp
- 今日も,ありがとうございました.
【TeX source text】以下は読まなくても結構です.\documentclass[a4paper,12pt]{jsarticle}\usepackage{amssymb}\pagestyle{empty}%%%%%% TEXT START %%%%%%\begin{document}\begin{enumerate}\item\textgt{「実数の公理」から出発する方法}次の (a) 四則演算,(b) 順序,(c) 連続 に関する公理をみたす集合 $\mathbb{R}$ の元を \textgt{実数} とよぶ.\begin{enumerate}\item四則演算任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対し,$a+b,ab\in\mathbb{R}$ が定義され,次をみたす.$a+b$,$ab$ をそれぞれ $a$ と $b$ の \textgt{和},\textgt{積} とよぶ:\begin{enumerate}\item任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,\[(a+b)+c=a+(b+c).\]\item次をみたす $0\in\mathbb{R}$ が存在する:任意の $a\in\mathbb{R}$ に対して,\[a+0=0+a=a.\]\item任意の $a \in\mathbb{R}$ に対して,次をみたす $-a\in\mathbb{R}$ が存在する:\[a+(-a)=(-a)+a=0.\]\item任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,\[a+b=b+a.\]\item任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,\[(ab)c=a(bc).\]\item次をみたす $1\in\mathbb{R}$ が存在する:任意の $a\in\mathbb{R}$ に対して,\[a1=1a=a.\]\item0 でない任意の $a \in\mathbb{R}$ に対して,次をみたす $a^{-1}\in\mathbb{R}$ が存在する:\[aa^{-1}=a^{-1}a=1.\]\item任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,\[ab=ba.\]\item任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,\[a(b+c)=ab+ac.\]\item$1\neq0$\end{enumerate}\newpage\item順序任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対し,2 項関係 $a\leqq b$ が定義され,次をみたす:\begin{enumerate}\item任意の $a\in\mathbb{R}$ に対して,\[a\leqq a.\]\item任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,\[a\leqq b,\ b\leqq a\Longrightarrow a=b.\]\item任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,\[a\leqq b,\ b\leqq c\Longrightarrow a\leqq c.\]\item任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,$a\leqq b$ または $b\leqq a$ の少なくとも一方が成り立つ.\item任意の $a,b,c\in\mathbb{R}$ に対して,\[a\leqq b\Longrightarrow a+c\leqq b+c.\]\item任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対して,\[0\leqq a,\ 0\leqq b\Longrightarrow 0\leqq ab.\]\end{enumerate}\item連続$\mathbb{R}$ の上に有界な空でない任意の部分集合 $A$ に対して,$\mathrm{sup}\,A$ が $\mathbb{R}$ の中に存在する.\end{enumerate}\end{enumerate}\newpage\noindent\textgt{【ぶっちゃけ小話】}\begin{itemize}\item和,積,順序に関して,注意しておきたいことがあります.和,積,順序は,高校までに教わった通りの定義とは限らないということです.とにかく「和」「積」とよばれる演算と「順序」とよばれる 2 項関係さえ定義されていれば,高校までに教わったものと異なっていてもよいのです.その上で,公理さえみたしていればよいのです.\item「(c) 連続」に知らない言葉が登場しているという方もいると思いますので,ここで紹介いたします.集合 $A$ で「(b) 順序」の i.,ii.,iii. をみたす 2 項関係 $\leqq$ が定義されたものを \textgt{順序集合} とよびます.順序集合 $A$ の部分集合 $B$ に対して,$m$ が $B$ の \textgt{最小元} であるとは,次をみたすことです:「$m\in B$ かつ 任意の $b\in B$ に対し $m\leqq b$.」順序集合 $A$ に対し,$a\in A$ が $A$ の部分集合 $B$ の \textgt{上界} であるとは,次をみたすことです:「任意の $b\in B$ に対して,$b\leqq a$.」順序集合 $A$ の部分集合 $B$ が上界をもつとき,$B$ は \textgt{上に有界} であるといいます.順序集合 $A$ の部分集合 $B$ の上界全体集合の最小元が存在すれば,それを $B$ の \textgt{上限}(supremum)とよび,$\mathrm{sup}\,B$ と記します.\item「(c) 連続」のどこが連続を表しているのか?いつになるか分かりませんがいつか,記事にしたいと思っております.お楽しみに!!\end{itemize}\end{document}