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『ちょっと早いかな?・・・』っと思いつつ、
ラニエロさんのトラットリア(食堂)へ向かった。

イタリアでは、レストランは「リストランテ」
庶民的な食堂は「トラットリア」という。

ラニエロさんのお店は半地下の様な
こじんまりしたスペースで、扉を開けると
まず下へ降りる階段がある。

階段を降りたフロアにはテーブルがいくつかあって、
壁にはセピア色で昔のローマの街並みが描かれている。

私が入るとラニエロさんは笑顔で迎えてくださった。
やはり時間が早かったのか、お店にはお客さんは
まだ誰もいなかった。

でもおかげで厨房に案内してくださった。
小さな厨房には、恐らく中東系の筋肉質のシェフと、
痩せた中国人のアルバイトの男性が働いていた。

ラニエロさんは、金属のヘラでガスレンジの脇を
擦りながら二人に厳しく指示を出した。
イタリア語だったのではっきりとは解らないが、
「もっとキレイにしなさい」ということだろう。

使い込まれたガスレンジはそんなに汚れてないのだが、
「調理器具をキレイに保つ」というラニエロさんの
仕事に対する姿勢が感じられた。
古いけれど清潔な厨房で作られる料理には安心感がある。

ラニエロさんの指示通り、せっせと厨房を磨く二人に
挨拶して握手を求めると、中国人の男性は汚れた手を拭いて
照れながら応じてくださった。

テーブルに案内頂き、まずはビールを注文した。
「何が食べたい?お肉?お魚?」と聞かれたので、
「何でもOK!」と答えた。
但し一人では量は余り食べられない旨を伝えると、
「お肉もお魚も少しづつね」と仰ってくださった。

「今日は何処へ行ったの?」
お料理を待つ間、この日の観光について話した。
もちろん、大ピンチ!の話はラニエロさんには内緒だ。

ほどなくして一品目がテーブルに届いた。
フランスパンの上にトマトの角切りとバジルが乗っている。

「うわぁー美味しそー!」
「いただきまーす!」

一口かじると、カリッと焼いたバゲッドの香ばしさと
新鮮なトマトとバジルの香が口の中に広がって・・・

「う~ん、ボォ~ノ!」(美味しい!)

味付けは塩、コショウ、オリーブオイル、
もしかしたらビネガー(酢)入っているかも?・・・
シンプルながら味のハーモニーが絶妙だ。

「ボォ~ノ、ボォ~ノ」

「ハッ、ハッ、ハッ」

「美味しい」を連発しながら食べる私を見て
ラニエロさんは嬉しそうに笑った。

あんまり美味しすぎて一気に食べてしまい、
食べ終わってから聞いた。

「これは何ですか?」

「ブルスゲッタ」

「ブルスゲッタ?」

今ではイタリア料理の前菜として珍しくないが、
30年以上前のこの時、
私は「本物のブルスゲッタ」をはじめて食べた。