「まったくもー!」
母との電話を早々に切って、
ベンチに座ろうとしたその時・・・
「バタ、バタ、バタ、」
大きな足音に気づき、振り返ると・・・
『あっ!おじちゃんだ!』
少し離れた所に、伯父がいるのを見つけた。
周囲をキョロキョロ見回している。
私は「おじちゃーん!」っと言って、
すぐにでも抱きつきたかった。
『でも、そんなことしたら、メソメソしてたと思われちゃう』
素直じゃない私が邪魔をした。
『私だって苦労してここまで来て、
おじちゃんのこと待ってたんだから!』
そのことを伝えたかった。
おじちゃんは、私には気づいていなかった。
『ワッ!ってやるのは、流石に悪いか?』
私は少しづづ、おじちゃんに近づきながら考えた。
結局、自分の気持ちを表現する最適な再会方法を
見つけられないまま、おじちゃんの傍まで来た。
チョン、チョン
おじちゃんの背中をつついた。
慌てて振り返ったおじちゃんの顔を、
今でも忘れられない。
真っ赤な顔で、ちょっと泣き出しそうなくらい
不安気な表情だった。
東京からはじめて一人で来る姪っ子が行方不明になり、
伯父もさぞかし慌てただろう。
そして、心配しながら必死で探してくれていたのだと思う。
そんな伯父に私は、
「バーカ!」っと言ってしまった。
もちろん、そんなこと言うつもりはなかった。が、
不安や、疲れや、イライラや、様々な感情が絡み合い、
素直に自分の気持ちを表現できなくて、
つい、口をついてしまった一言だった。
滞在中、この時の騒動を人に説明する度に、
「いや~マミちゃんに、バーカ!って言わったもなー」
っと、伯父は笑い話にしてしまった。
『悪かったな』っと反省していた私は、
その度に少々気まづい思いをしていた。
今にすると、あれは、
ユーモアセンスもある伯父の、優しさだったと思う。
列車が大幅に遅れて、到着するホームが変更されてしまい、
そのこを知らなかった伯父は、別のホームで待ってくれて
いたのだそうだ。
到着するはずの列車がなかなか来ないので、
駅員室で事情と、変更されたホームを聞いて行ったのだが、
どうやら私とすれ違いになってしまったらしい。
ということは、やっぱり私が動かなければ、
再会がもっと早かったことになる。
が、車庫に入ってしまった列車や、薄暗いホームに
あれ以上いられなかった。
「いやーっ、いてけてよかったー」
そう言って、再会を喜びあった伯父と駅を出ようとした時、
車内で私を助けてくださったおばあさんを見かけた。
私は慌てて伯父に事情を説明した。
「んだったのか」
そう言いながら伯父は、おばあさんにお礼を言ってくれた。
私は、改めてお礼を伝えることができて『よかった』と思った。
「いや~マミちゃん、来てけてよかった」
伯父の家に行くと、おばあちゃんと、従姉妹達が迎えてくれた。
だが、伯母の姿がなかった。
東京の母から電話がきて、私が伯父と逢えていないことを知り、
伯母も私を探しに行ってくれたとのこと。
「俺が、かあちゃんば探しに行ったほうがいいべか?・・・」
伯父がそう言いだした頃、伯母が帰ってきた。
「あー、マミちゃんいたんだね。いかったー」
「おばちゃん、ありがとう」
その後、襖の陰で足に絆創膏を貼っている伯母の姿を見かけた。
「怪我しちゃったの?」
「んねっ。ちょっと、擦りむいただけ」
「私のせい・・・」
「んねっ。ちゃんとした靴履いてけばよかったのに、
サンダルなんて履いて行っちゃったから」
「ごめんなさい」
「んねっ、だいじょぶだ」
確かに伯母が帰って来た時、ベルトの付いた
緑色のサンダルを履いていた。
きっと、母から連絡を受けた後、伯母も驚いて慌てて
飛び出したのだろう。
それまでも『悪かったな』っと思っていた私は、
この時『これ以上迷惑はかけられない』と、強く思った。
そもそも東京から姪っ子を1ヶ月も預かると、受け入れる
だけでも大変なのに、到着早々ハプニングにあって、
とんでもないことに巻き込んでしまった。
私が「一人でも山形に行く!」と言ったばっかりに・・・
伯父と、伯父家族には、とんでもない迷惑をかけてしまった。
他にも滞在中にお世話になり、心からありがたく思っている。
自分の希望を実現するには、責任が伴うことを、この時学んだ。
そして、夢や希望を叶えるのは、
決して一人ではできないことも・・・
私がこれまで多くの夢や希望を叶えることができたのは、
家族を含め、多くの人達に助けていただけたからこそと、
心から感謝の気持ちでいっぱいだ・・・・・