『昨日はラニエロさんと観光できてよかったな』
ローマで過ごす最後の日曜日は、
お散歩や読書でもして過ごすつもりだったが、
思いがけずラニエロさんと出逢って観光し、
韓国焼肉までご馳走になってありがたかった。
こんなハプニングは大歓迎だ。
一度見ていた場所でも地元の人と歩くと
新たな発見があったり、知らなかった知識が
増えたりして一層深く観光できる気がする。
そして何より安心感がある。
夜はラニエロさんのお店で食事をすることを楽しみに、
この日の観光へ出掛けた。
まず【トリトーネの泉】に行き、
【バルベリーニ広場】から延びる
システィナ通りをのんびり歩いた。
この通りはなだらかな坂道になっていて、
自分が向かう先に続く坂道と、
歩き進んで振り返り、たどって来た坂道の風景を
写真に撮った。
ゆるやかな坂道をどこまでも進むと、
【スペイン階段】を見下ろす
【トリニタ・ディ・モンティ教会】へたどり着く。
この日はとても寒い日で、ここまでの道のりで
体が冷えてしまったのでお茶することにした。
【スペイン階段】のすぐ脇に
老舗の「バビントンズティールーム」
というお店がある。
ローマではカプチーノやエスプレッソが主流だが、
このお店はイギリスの伝統的なケーキや
紅茶が味わえる貴重な場所だ。
実は以前【スペイン階段】に来た時に気になって、
『いつかゆっくりお茶をのみたい』と思っていたのだ。
重厚な扉から中に入ると、流石に歴史的なお店だけに
内装も家具もシックで落ち着いた雰囲気だ。
私は今でもゆった~りお茶をするというのが苦手で、
『次のお客さんに席を譲らなくては』っと思ってしまい、
飲食が終わったら早々にお店を出るタイプなのだ。
「バビントンズティールーム」では、大き目のポットに
たっぷり入った紅茶を頼んだので、お替りを注ぎながら
いつもよりは時間稼ぎができる。
ここで私は、田舎の親戚達に絵葉書を書いた。
私は子供の頃から海外に興味があったのだが、
親戚で海外に出掛けた話をこの時まで
聞いたことがなかった。
恐らく私が出す絵葉書が海外から受け取る
初めてのエアメールになるのでは?っと思ったのと、
何より海外の素晴らしさと、この旅の感動を
親戚の人達にも知ってもらいたいと思ったのだ。
私は東京生まれだが両親は共に山形の出身で、
母方の親戚達は母以外、全員山形で暮らしている。
7通の絵葉書、しかも書きたいことが溢れてきて
長文になってしまったので、全部書き終わるまでに
結構時間がかかった。
だが店内は外の喧騒が嘘の様に静かで、
ゆったりとした空間だった。
美味しい紅茶を飲みながら、
これまでの旅のあれこれを思い出し
親しい人達に想いを綴るのは、幸せな時間だった。
体も心も温まり【スペイン階段】を登り、
【トリニタ・ディ・モンティ教会】の前のテラスから
街を眺めると、目の前の景色が何とも愛おしく思えてきた。
ローマに来てから何度か目にしている街並みが、
既に私にとって愛着のある街になって、
さっきまで親しい人達のことを想っていた気持ちが
更に愛着を深くしていったのかもしれない・・・・・
テラスの先を歩き続けると、
ローマの街並みがどんどん広がってゆき、
遠くヴァティカンの【サン・ピエトロ寺院】の
ドームも見えてきた。
雲の隙間からサーッと光が差して、
街を照らす光景が何とも美しく見える。
「ありがとうございます」
自然に光に向かって手を合わせていた・・・・・