任意後見制度の利用状況に関する意識調査 | 成年後見日記

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令和4年5月18日、第13回成年後見制度利用促進専門家会議が開催されました。

 

この会議において、法務省が成年後見制度の利用の促進に関する取組状況等について報告しました。

 

その報告の中で、法務省が令和3年度に実施した「任意後見制度の利用状況に関する意識調査」の結果概要が明らかにされました。

資料⇒コチラ

 

この調査結果の概要は、任意後見制度の問題点を浮き彫りにしたと言えるでしょう。

 

この調査は、任意後見監督人が選任されていない任意後見契約の委任者(本人)及び受任者約8万人を対象に実施(契約締結から約10年以上経過)されました。

 

任意後見契約の受任者は、親族の割合が高いのですが(※)、遺言や死後事務とセットで(しかもそちらがメインで)契約が締結されるため、受任者が任意後見契約の内容についてあまり理解していないことがあると思われます。

※任意後見制度の利用状況に関する調査について⇒コチラ

 

また、たとえ契約締結時には公証人から説明を受けて契約内容を理解したとしても、契約締結から時間が経ってしまうと、記憶も薄れてしまうでしょう。

 

その結果、今回の意識調査の結果にあるように、

本人の判断能力が低下した場合に任意後見監督人の選任の申立てをする必要があることを知っているか(質問13)

という任意後見制度の肝となる問いに対して、

 

「知っている」が約68%

「知らない」が約24% 

※「知らない」のうち約92%が親族の受任者(受任者に占める親族の割合は約63%)。親族の受任者のうち約 38%が「知らない」と回答。

 

という、驚愕の結果が生じたのではないかと思います。

 

さらに、

本人の判断能力が低下した場合の任意後見監督人の選任申立ての意向(質問14)

という問いに対しては、 

 

「必ずする」「たぶんする」が合計約47%

「たぶんしない」「しない」「分からない」が合計約33%

 

という、こちらも衝撃的な結果となり、制度への理解が不十分であることが露呈されています。

 

法務省もこの調査結果を受けて、

「制度に関する理解の不十分さが原因と思われる回答があるため、引き続き、公証役場で任意後見契約の内容や本人の判断能力が低下した場合に速やかに任意後見監督人選任の申立てをする必要があることの丁寧な説明、関係機関と連携したリーフレット・ ポスターなどによる継続的な制度の周知が必要」

と結論付けています。

 

この任意後見受任者の制度理解の不十分さは、任意後見監督人の業務の負担を重くする原因にもなっています。

 

法定後見の場合は、裁判所でのビデオの視聴などにより、後見人が一定程度業務内容を理解しているのに対して、任意後見の場合は、後見人がそもそも任意後見契約の内容を理解していないため、任意後見監督人が手取り足取り業務を教えるということが求められることがあります。

 

任意後見制度の利用促進のためには、任意後見監督人の業務を定期的な確認業務だけにして、報酬を低額にするのが望ましいとも思われますが、実際には、法定後見の監督人より手間がかかる場合があるので、法定後見の場合よりも低額にする根拠に乏しいと言えるでしょう。

 

今回の調査結果の概要を見て、契約締結時にのみ公証人が関わって、あとは放置するのではなく、任意後見契約の本人・受任者の継続的な見守り・支援をする仕組みを作っていく必要があると感じました。

 

(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)

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