後見人をしていると、ご本人の親族の方から、
「通帳を見せてほしい」
「裁判所に提出する報告書を見せてほしい」
と言われることがあります。
親族がご本人の財産の開示を請求する理由としては、
①最近後見人の横領事件があるので、心配なのでチェックしたい
②いずれ自分が相続するので、財産内容を知りたい
等が考えられます。
このように親族から財産開示の請求をされたら、後見人はどのように対応すればいいでしょうか?
成年後見人には、開示義務はないことは明らかです。
後見サイトの「よくある質問(FAQ)」(⇒コチラ)においても、次のようなQ&Aがあります。
Q 後見人に母の財産目録を見せるよう頼んでいますが,見せてくれません。本人の家族にすら見せられないという法的根拠を教えてください。
A 後見人には本人の家族に財産を開示しなければならない義務はありません。
私も、親族からご本人の財産を開示してほしいと言われたら、原則としてお断りしています。
ただ、後見人が、「見せられません」という原則論を貫くことで、親族との関係が悪くなったり、親族の協力が得られなくなったりするのは、ご本人のためにならないことは明らかです。
成年後見人のバイブル「成年後見教室 実務実践編3改訂版」P.74においても、
「積極的に情報開示をする必要はありませんが、推定相続人には相続開始時には分かることでもあり、概算を開示することは場合によっては後見人として許容されると思われます。」
という記載があります。
かなり歯切れが悪いですよね…。
そもそも後見人に対して、自己のリスクで財産開示するかどうか判断させるのは酷な話ではないでしょうか。
私は、親族から財産開示の請求があったら、
「裁判所に記録の閲覧・謄写申請をしてください」
と言うようにしています。
後見サイトの「よくある質問(FAQ)」(⇒コチラ)においても、次のようなQ&Aがあります。
Q 私は本人の親族です。後見人が裁判所に提出した報告書を見たいのですが,後見人が見せてくれません。報告書を見る方法はありますか。
A 裁判所に記録の閲覧・謄写申請をするという方法があります。後見センターの窓口で申請書に記入のうえ提出してください。裁判官の許可が出れば閲覧・謄写ができますが,後見事件は非公開の手続のため,だれに対しても許可されるわけではありません。許可されたかどうかは後日電話でご連絡します。
裁判官の許可が出れば閲覧・謄写ができるということですが、どういった場合に裁判官の許可が出るのでしょうか。
これについて、村田斉志最高裁判所事務総局家庭局長が、実践成年後見No.68のP.31において、次のように述べられています。
「…一定の範囲の親族は、成年後見人等の解任の申立権があるわけですが、そういった方々から、記録の閲覧の申請があった場合には、そういうものもある種有効なチェックであると受け止めて、不当な目的で行われた濫用的な申請でなければ、可能な範囲で裁判官が記録の閲覧を許可するという運用が行われているところもあるようです。」
このような裁判所の運用について親族に説明することも必要ですね。
後見人にとっては、ご本人のためにその親族といい関係を築くのも大切な仕事です。
親族から財産開示請求があったら、丁寧に対応することを心掛けたいものです。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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