成年後見制度利用促進案byリーガルサポート | 成年後見日記

成年後見日記

司法書士の成年後見に関するブログです。
※あくまで個人の見解であり、所属団体とは関係ありません。

成年後見申立相談⇒ info2@ben5.jp
事務所:東京ジェイ法律事務所(東京都千代田区) 

成年後見制度利用促進委員会の「第1回 利用促進策ワーキング・グループ」の会議が平成28年10月12日(水)開催 されました。

 

ここで、各委員から「利用促進案」が提出されています。

 

リーガルサポートの川口純一委員からもリーガルサポートとしての「利用促進案」が提出されました。⇒http://www.cao.go.jp/seinenkouken/iinkai/wg/riyousokusin/1_20161012/pdf/siryo_4.pdf

 

私もリーガルサポートの一会員ですので、どのような利用促進案が提出されたのかチェックしてみたいと思います。

 

ここで注目したいのは次の2点です。

① 家庭裁判所の後見監督の在り方の見直し(行政、民間団体等も後見監督に関わる仕組みづくりの構築)

② 行為能力の制限(取消権の行使可能性)を中心とした制度から、本人に寄り添う支援のツールとしての代理権(同意権を含む)の付与・行使を中心とした制度への運用の転換

 

①では、通常の監督(定期報告書のチェック等)については、裁判所ではなく別の機関がすべきであるとしています。これは私も賛成です。財産目録のチェックなどはそもそも裁判所のする性質の仕事じゃないな~と常々思っていました。

リーガルサポートは会員監督のノウハウがありますからこの監督機関の一翼を担えるのではないでしょうか。

現在、監督人の報酬は本人の財産から支出するので、これに対する制度利用者の不満・反発がありましたが、「監督費用は国家が負担すべき」と提案しています。これについても私は賛成ですが、問題は予算がつくかどうかですよね…。

 

②では、制度利用により一律に行為能力を制限するのではなく、個別の案件ごとに適切な代理権の付与・行使がされる制度にするというものです。要は、本人に必要なときだけ本人を支援できるものにするということですね。これは、現在の成年後見制度を根本から変えるもので、民法の改正を伴うものです。これが実現すれば、障害者権利条約との齟齬についてもかなりの程度解決されるのではないのでしょうか。

 

以下、リーガルサポートの利用促進案の該当部分の抜粋です。

 

【 家庭裁判所の後見監督の在り方の見直し(行政、民間団体等も後見監督に関わる仕組みづくりの構築)】
家庭裁判所は、後見の開始、後見人の選任・解任等については、独占的な判断権を有している必要があるが、後見人の支援、指導監督等の任務の全部を家庭裁判所が担わなければならないと考える必要はないと思われる。平時の後見監督、すなわち、後見人の支援・援助といった側面を中心とした緩やかな後見監督の機能は、行政機関、一定の質(能力)が担保される仕組みが確保されている民間団体等が、その全部又は一部を担うことも検討されるべきではないか。この緩やかな後見監督の機能を有する機関は、地域の実情に応じて様々なバリエーションが認められてよいと考える。このような機関の設置、運営等については、専門職後見人の指導監督を主たる事業としてきた当法人のノウハウを生かすことができる分野が少なくないと思われるので、当法人としては、このような機関の設置、運営に関して、最大限の協力体制を構築したい。
なお、後見人の支援・援助といった側面を中心とした緩やかな後見監督の機能は、本来は国家の責任でなされるべきものと考えられるので民間団体や専門職が実施する場合には、監督費用は国家が負担すべきではないかと考える。

 

【 行為能力の制限(取消権の行使可能性)を中心とした制度から、本人に寄り添う支援のツールとしての代理権(同意権を含む)の付与・行使を中心とした制度への運用の転換】
現行制度は、制度の趣旨だけでなく、実際の運用も、判断能力の低下の程度を基準に行為能力の制限の度合い(取消権の行使ができる範囲)を決めるという考え方に基づくものであるが、取消権の行使は、本人の客観的利益の保護のために必要なだけでなく、実際の運用も、判断能力の低下の程度を基準に行為能力の制限の度合い(取消権の行使ができる範囲)を決めるという考え方に基づくものであるが、取消権の行使は、本人の客観的利益の保護のために必要なものであるとはいえ、本人の意思・主観的利益の尊重という観点からは、「判断能力の低下が著しい」というレベルに達する前の状態の本人にとって、必ずしも「使いたい」「使うことにメリットがある」と思わせる制度になっていない。
一方、後見制度を、必要に応じた適切な代理権の付与の仕組みであると理解し、代理人が、個別の事案ごとに、本人の主観的意思を最大限に尊重して代理権を行使することができ、しかも、そのことに対して何らかのインセンティブが付与されるような制度の運用を目指せば、後見制度は、依然として重要な意思決定支援のツールといえるのではないかと考える。
制度を利用することにより本人の行為能力が制限される、という仕組みから、代理権の付与という機能を中心とした制度に転換を図ることにより、成年後見制度は、利用者である本人にとって、更には本人のことを親身に考える周囲の多くの支援者にとって、「使って良かった」という実感を持てるような制度になることが期待できるのではないか。
なお、個別の案件ごとに適切な代理権の付与・行使がされるような実務のプラクティスが定着した暁には、現行制度の後見、保佐及び補助の3 類型を維持する必要は必ずしもなく、保佐又は補助の制度をベースに、個別の事案に応じて適切な代理権の付与の審判を受け、代理人が本人の主観的意思を尊重して代理権を行使して本人の主観的・客観的利用を保護する制度に自ずと成年後見制度は変容していくのではないかと考えている。

 

(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
 

★お問い合わせ先★ 
 info2@ben5.jp

★過去の後見日記★

「成年後見相談室」
 http://www.tokyoj-seinenkouken.jp

★twitterアカウント★

 https://twitter.com/mami_nomura

 

★任意後見Q&A★

 http://ben5.jp/faq/faq01_16.html