”結婚をして子供を産んで、育てて巣立たせて、そこにさまざまな感情も幸福もあったはずなのに、通り過ぎてしまうとすべてが無声映画のひとこまだったような気がしてくる。声をどこかに置いてきたせいで、ひとつひとつあとから字幕をつけなければならない。その場に立ち止まって踏ん張る、ということをしてこなかった体は思いのほか軽かった”
”このくらい痛めつければ、もうどこにも行かないだろうと思ったんです。女子供を殴ったり蹴ったりしてても、あの男はそういうヤツだから、で済まされる時代でした。隣近所の人間も、わたしが顔を真っ赤にして女房を殴っているときは何も言いません。娘たちは、自分たちが止めに入れば一緒に殴られるので、一生懸命に近くの大人を呼ぶんですよ。でもね、誰も来ないんです。一度手をあげてしまうとね、止めて欲しいと思っていても止まらないんです。”
”ついさっき娘に捨てられた時も「捨てる側の方が余裕なさそうだ」と、静かに萠子を見下した。捨てることに大きな意味を持たせ、罪悪感に蓋をする娘に何も言い返さないのは、対等だと思っていなかったせいだ。登美子は娘に捨ててもらうことで子育ての負い目を反転させ「勝ち」を得たのだ。”
”珠子も、そんなことを繰り返していれば、いずれ手がうしろに回る日がくるかもしれない。それでも、と思うのだ。それは珠子自身の落とし前のつけ方だ。”
”親子の縁を切っても、という意味だと気づくのに少しかかった。縁か、と声にせずつぶやいた。そんなものは、もうとうの昔になくしてしまいました。もう、影も形も残ってはいません。登美子の内側にひたひたと冷たい水が満ちてゆく。”
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序盤は少しまどろっこしく感じてなかなか感情移入が出来なかったのです。というのも、やっぱり私は医療者なので認知症の人を描く時にリアリティに欠けていると…世界に入るのが難しく感じてしまいますね。しかしやっぱり著者の本は好きです。後半は読み進めるのがとまらなかったです。世間では家族という言葉の視点がんじがらめになってしまいがち。そこを色んなカタチで自分と子どもを切り離したり、夫婦を切り離したり、逆に離せなかったりという展開が切なくも面白かったです。そうなんですよね。家族であっても個々の人間ですから。やっぱり何を損得と思ったり、求めあう愛情や関係というのはそれぞれに違うのです。だから思ったような親じゃなかったり、子どもじゃなかったり、両親の姿ではなかったとしても、それも家族として正解不正解はないのだと思います。家族のことなどで悩んでいたする人にはお勧めです。
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