【39 刑法第三十九条】~あらすじ~ 安心の演技力 

 

2時間超えの大作なので~あらすじ~も長い!長い!

2部に分けようかとも思いましたが、私自身があらすじはイッキに読みたい派

なので、感想を別にします。

 

この映画は1999年にも観ましたし、何度も観ましたが、内容が深いので、

1年位するとまるで初見のように戻れます。

刑法第三十九条に切り込んだ作品で、暗に批判してます。

人権派の方々にも観て欲しい作品です。

 

現在でも刑法第三十九条は無くなっても改正もされていません。

精神障害者の重罪を無罪にすることが人権なのでしょうか?

被害者の人権と生きる権利はどうなるの?

考えさせられます。

 

この作品は~あらすじ~の冒頭にも書きましたが、1回2回じゃ理解できない

複雑な人間模様があります。

 

工藤啓輔の背景

柴田真樹の背景

小川香深の背景

 

これらの背景を刑法第三十九条に絡めていくのですが、これだけの容量を

実に上手にまとめています。

脚本が巧いんでしょうね。複雑で重い内容なのにテンポ良く進みます。

観ててだらけません。

 

私が許せないのは柴田真樹の父親の利光(國村隼)です。

ロクに働きもせず酒に溺れ息子を虐待ですよ。

回想シーンでは長い時間埋められてる感じでした。

恐らく土中から助けたのは近所の人で利光じゃないと思います。

埋められてたことを近所は覚えてましたから。

 

ここからは私の推測です。

利光は働きもせずに酒は呑んでるので借金生活が予想されます。

いよいよ命を取られる段階まできて、取り立て屋の裏ルートで

マグロ漁船ならマシですが、臓器売買で息子を売ったんじゃないかと・・・

 

真樹が急にいなくなったら近所は不審に思いますし、日頃から虐待してることは有名です。

警察に介入されたら言い訳できません。

 

それで利光は「ふたりで引っ越す」と言って、東京に逃げてホームレスに

なったんじゃないでしょうか。

 

息子が死んでると思ってたこと。

東京に着いてからは別々に暮らしてたという不自然さ。

死亡届けが出せない死に方。

 

全ての辻褄が合います。

 

戸籍を探してホームレス集落を転々としてた工藤啓輔(堤真一)と出会い、

面倒見てもらって、アパートでふたり暮らしができて、最期はちゃんと病院で

看取ってもらってるって・・・はぁ???

 

利光は本当は真樹じゃないって分かってたと思います。

10年振りでも我が子と他人の区別はつくでしょう。

それ以前に、真樹は実の子ではない可能性もあります。

男作って我が子捨てて出て行った母親でそれきりですしね。

だからといって虐待は最低です。

 

利光が真樹の行方不明に関わっていることは間違いないんじゃないかな。

生きていけることが極めて低い状況も把握してたから、

「息子は死んでると思ってた」のではないでしょうか。

 

そんなクズ父でも時が経ち、自分が真樹にしたことの大きさを悔いてる日々に

工藤啓輔が現れた。

真樹だと思い込むことで贖罪から逃げたとしたら、この不自然な親子関係は成立しますよね。

 

その内に本当に真樹だと脳に刷り込んだかもです。

 

利光は極悪な父親のくせに、たった10年ホームレス生活したくらい

の苦労で、死ぬまで工藤啓輔に手厚く面倒見てもらって安らかに逝ってるんですよ。

 

許せる???

 

生きてる間中、父親に虐待され続け、何らかの方法で命まで奪われた真樹の

想いはどうなるの?

たった15年で人生を奪われ、しかも戸籍上は生きてる真樹の魂を弔う人が

ひとりもいないって、そんな悲しいことあっちゃいけないよ。

 

「山女」の凜ちゃんのクズ父(永瀬正敏)以上のクズだわ!

(「山女」のあらすじもどうぞ)

【山女】〜あらすじ〜 

 

私は真樹が不憫で不憫で仕方ありません。

 

工藤啓輔には実可子がいました。

将来的には実可子か香深のどちらを選ぶ?な状況も予想されます。

家族の愛も知ってます。

殺された温子ちゃんもです。

 

真樹はどうでしょう?

幸せだったことなんてあったのでしょうか?

 

柴田利光には野垂れ死にして欲しかったなーと思うワタクシでした。

 

柴田真樹については劇中、ほんと詳しくは出てこないのですが、

ポイントはしっかりと押さえてて見事な脚本だと思いました。

 

工藤啓輔(堤真一)については、もう途中から早く救ってあげて!

荷物を降ろしてあげて!楽にさせてあげて!

そんな気持ちになりました。

 

この作品は全ての謎解きまでしてません。

想像力は必要です。

 

例えば、1度観ただけでセリフを全部覚える能力

あれは劇が有名な「ハムレット」でした。

事前に暗記してたんですよ。

一緒に観に行く女の子には「観たことない」と言ってただけで。

同じメニューしか食べないのもしかり。

 

多重人格者を装うための布石です。

 

ただ、人格交代の時の手の震え・・・

あれは本物だと思うんですよ。

恐らく、人格交代の演技に入る時に温子のことがフラッシュバックしてるんじゃ

ないかと。

あと、幻視も見てます。

 

刑法第三十九条からは弾かれたので、工藤啓輔は一般裁判によって裁かれますが、

工藤啓輔は正常ではありません。

ケアが必要な人間です。

 

最後に、この超難しい役を堤さんは見事に演じてました。

役者って凄い仕事ですね。

こんな素晴らしい作品を世に出してくれた関係者の皆さまに感謝感謝です。

 

ありがとうございました。