2022年 日本映画

出演:山田杏奈・森山未來・永瀬正敏・二ノ宮隆太郎・三浦透子・山中崇・白川和子

              

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18世紀後半の東北 冷害2年目の夏

作物は取れず、生まれたばかりの我が子を口減らしで手にかける父親(山中崇)

その遺体の処理をするのが物語の主人公の凛(山田杏奈)

 

凛の父親・伊兵衛(永瀬正敏)の曽祖父が火事(放火?)の咎で田畑を取り上げられ

凛の代になっても尚、村の汚れ仕事と差別の対象になってる。

 

「次は人さ生まれてきたらダメだよ」

嬰児を川に流す凛。

 

大人の場合は父親と埋める。

凛は少しでも深くと土を懸命に掘るが、伊兵衛は適当だ

もういいべで、まだ浅い土中に遺体を乱暴に放り込む。

伊兵衛の人柄がよく分かる。

 

夕げは少しばかりの米(粟かも)らしきものが入ったほぼ汁。

それすらも伊兵衛はおかわりして凛の分はない。

自分は我慢して父と弟にあげる優しい凛。

(顔がまんまるなのは大目に見よう)

夜は夜で、行商で売るための草鞋を編む。

 

せっせと働く凛と対照的に、村の配給で米の量が少ないと問題を起こす伊兵衛。

田畑がないからと少量しかあげない村も村だ。

 

 

川縁で山を眺めていると行商から泰蔵(二ノ宮隆太郎)が戻ってきた。

預けていた草鞋は売れなかったという。

泰蔵は村人から預かった物を馬に乗せて行商に出る仕事らしい。凛に気があるのが分かる。

 

この村は元々貧しいのだろう、村長も含め小綺麗な人はいない。

ひとり残らず小汚い。

 

ーーーそして事件は起きるーーーー

伊兵衛が村の米蔵から盗みを働き、村人たちがボロ小屋に捜索に来たのだ。

盗んだ米はあっけなく見つかり、泥棒は重罪だと脅される。

凛は父親を庇い自分がやったと言う。

これ幸いと「やったらダメんことやったか!」と凛をタコ殴る伊兵衛。

 

クズ父め💢(永瀬正敏)

 

泥棒の罪は重く、後日処分を決めるそうだ。

 

クズ父め💢(永瀬正敏)

 

が、処分を待たず凛は山へ向かう。

途中で履いていた草鞋を脱ぎ裸足になる。

伊兵衛が凛に気付き声をかけると、凛は深々と頭を下げて消えていった。

伊兵衛は止めなかった。

凛がいると泥棒の咎で益々酷い扱いを受けるので、神隠しに遭った事にした方が都合が良いからだ。

 

クズ父め💢(永瀬正敏)

 

凛は化け物が住むという祠の先に足を踏み入れた。

化け物に喰われた方がマシだったが、夜になりオオカミの群れが現れるとさすがに狼狽えた

が、そこに長髪で髭共に真っ白な仙人のような老人(森山未來)が現れるとオオカミたちは怯えて逃げ去った。

山男に違いない。

 

朝になり、凛はようやく山男の住処の洞窟に辿り着いた。

 

山男は仕留めたオオカミの腹を素手で裂き内臓を貪っている。

空腹の凛がその様子をじっと見つめていると、山男は凛に内臓を放り投げてくれた。

(食べるのか!?)

 

ずっと起きてた凛は日が高くなるまですっかり寝てしまい、起きてから木の実など摘む。

日が暮れて火を焚きオオカミの肉を焼く凛。

焚き火を珍しそうに山男も近付いてきてふたりの夕げが始まる。

山男はやはり生食だ。

「おまえさん山男だべ」

 

何も答えない山男。

 

そして洞窟の奥の枯葉などが敷いてある寝床で眠る山男に、一宿一飯の恩義を体で返そうと裸になる凛だったが、山男は寝返りを打ち凛が眠るスペースを与えてくれた。

脱いだ着物をまた着て、山男の隣で眠る凛。

 

凛にとって幸せな生活が始まった。

 

凛がいなくなった村では冷害対策に天の神様への人身御供として生娘を捧げることになったが、

自分の娘となると誰もが断る

凛でもいたら好都合だったが神隠しに遭ったことを村人は信じている。

泰蔵以外は。。。

 

今まで凛がやってた汚れ仕事は弟の小吉が継いでいるが、今日も今日とて村人に殴られる。

小吉は何も悪くないのに、生きてること自体が気に入らないんだと💢

まだ子どもの小吉に・・・

 

この村人たちも酷いもんだ。

冷害で全滅してしまえ!と思う。

 

士農工商穢多・非人

凛の家はエタでもヒニンでもないが村人からの扱いは同じ。

エタ・ヒニンは人ではないという日本の黒歴史で、

今でも部落や部落民と言われる現代にも繋がる差別です。

 

この時代の人たちに差別なんて当たり前のことなのだ。

 

すっかり山の生活に慣れ、山菜摘みをしてる凛。

綺麗な白いりんどうの花を見つけ、ひとつ川へ流した。

下流の弟の元へ届きますように。

姉ちゃんは元気で生きとるよ。

そんな想いを込めて。

 

夜になると凛は山男に語り出す。

山男は言葉を持たない。

もしかしたら凛の話も感性で聞いてるだけかも。

凛と山男の優しい時間が過ぎていく。

ふたりの間には強い信頼関係が芽生える。

 

ーーーだが、その静かな幸せも終わりを迎えるーーー

 

凛が恋しい泰蔵とマタギたちに見つかって、山男は猟銃で撃たれて殺されてしまうのだ。

このシーンは圧巻です。

息を飲みます。

凛は縛られて、連れて行かれながら激しく泣き叫ぶ

「おねげーだ!一緒に殺してけろ!」

「一緒に殺してけろ!」

 

目を開けて倒れてる山男ですが

本当に死んでるのでしょうか?

 

なぜ村がマタギを雇ってまで凛を探したか?

勿論人身御供にするためです。

凛なら村にとって痛くも痒くもない存在だから。

そうとは知らない泰蔵も騙されてたのです。。。

 

牢屋に入れられた凛のところへ伊兵衛が来て凛の好物を渡します。

そして人身御供の対価として田畑が返されることを告げて、

「立派にお役目果たしてこい」

 

クズ父め💢(永瀬正敏)

 

次に泰蔵が来て凛を助けようとするが牢の鍵は壊れない。

「もういい!お役目果たすんだ!」

山男を失った凛にとって、今更自分の命などどうなっても構わないのだ。

 

深夜

牢屋の前の馬屋から小さく馬の声が

まるで凛を呼ぶようだ。

凛が牢の隙間から顔を出すと、1匹の馬がじっと凛を見つめる

その馬の立髪が山男の髪に変わり、山男が凛を見つめているように見えた

錯覚なのか?

山男を想い悲しむ凛

 

翌朝、身を清められて白装束を纏い火刑台に向かう凛

人身御供の方法が火炙りとはなんと残酷な

 

生まれた時から蔑まれ、小さな幸せも奪われた凛にとって

今はただ山男のいるところへ逝きたいだけ

 

柱に括られ、藁に火が放たれる

火は瞬く間に炎となって凛を足元から襲う

恐怖に震えるが、それでも悲鳴は上げないと決めてる凛は口元を固く締める

 

ところが雲行きが突然変わり、激しい雷雨で炎はたちまち消え

柱に雷が落ち、柱ごと凛は倒れて縄も切れた

 

山男の祟りだと恐れ慄く村人たちは

手を合わせお経を唱えながら凛に向かって土下座する

 

そんな村人たちを無視して、静かに立ち上がった凛は山に向かって歩き出す

 

           ーーーーー完ーーーーー

 

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山男は山神様だったんですね

あ、天気を操ってる感じのくだりがあったので神様だろうと思ってました

 

映画のタイトルの「山女」とは凛の未来を指してて

凛は山へ戻り、山男に守られながら山女になるのでしょう

 

もしかしたら山男は撃たれた肉体ではなく、姿は違うかも知れませんし

凛の中に同化するのかも知れません

普通に傷口を再生して元の姿かも知れません

 

どう変わっても、凛は山女として永遠の時を山男と生きる

究極のハッピーエンドではないでしょうか(*^^*)

 

山男とマタギたちとの格闘シーンは圧巻でした

短いシーンですが、山男の人間離れした怪力が良く出てますし

とにかく山男の森山未來さんの動きが美しく格好良いのです

振り返ると、洞窟でオオカミの内臓を生食するシーンも

あんな大きなオオカミひとりじゃ到底運べない

 

随所随所に人ではない存在が散りばめられてました

 

さすが森山未來さんですよね(^^)

セリフ0でも際立った存在感でした♪

しかも老人役ですw

 

凛が最後に村を去る後ろ姿で物語は終わりますが、

凛ちゃん、あなたの幸せはこれからよ

もうすぐ山男に会えるのよ

 

恐らく村では、凛は山男に愛された山女として

蔑む対象から祀られる対象になるのではないでしょうか

弟の小吉ももう殴られることはないでしょう

 

冷害が続くと村は全滅して凛の家族も死んでしまう

凛を悲しませることを山男はしないでしょうから

きっと太陽も出してくれると思います

 

個人的にはクズ父(永瀬正敏)にバチが当たれ!

なんですが、永瀬さんのクズっぷりが憎らしいほど最高でした

 

素敵な物語なので機会があったらご覧下さい\(//∇//)\