「ドラゴンさんは大忙し」 | 猫とともにあみぐるみ

猫とともにあみぐるみ

忙しい毎日にかわいい手作り雑貨でほっこりを

光熱費が値上がりしているのもあり、ペット用のホットカーペットをそれぞれにと3つ購入。どこに乗るのかは猫達の気分次第。この日は黒猫2貫になってました笑



まめやのあみぐるみ達が登場するオリジナルストーリー4作目「希望の丘の上に立つ木」が完成したので、2作目の「ドラゴンさんは大忙し」を全文掲載しようと思います。子守は得意だと言うドラゴンさんですが、さて大丈夫だったのでしょうか? 

「ドラゴンさんあの時は大変だったね」

「せやったなぁ…ワハハハ」





それではお楽しみください♪


【ドラゴンさんは大忙し】

のほほん村に春がやって来ました。村には色とりどりのたくさんの花が咲き、村の住人達もいつもよりウキウキしているようです。そんな陽気に誘われてカバのせっちゃんは、湖のほとりで日向ぼっこをしています。もちろん手にはピーナッツバターサンドを持っています。

森の入り口近くからなんだか騒がしい声がします。

「はいはい、ちょっと待っててね。みんなで仲良く飲んでちょうだい。しろちゃんもほらお乳よ」

三毛猫母さんのところに赤ちゃん猫が生まれたようです。みんな競い合うようにお乳を飲んでいます。

左から黒、茶トラ、三毛、黒白、そして一番小さいのは白猫ちゃん。お乳を飲むのが下手なのか、みんなの勢いが強いのかすぐにお乳から離れてしまうので、三毛猫母さんが優しく元に戻しています。

そのそばで黒猫ちゃんはちょっと退屈そうです。そんな黒猫ちゃんに三毛猫母さんは言いました。

「やれやれ毎日忙しいわ。黒猫ちゃん、妹や弟が出来て嬉しい?」 

「うん」

「この子達ほんと小さくてかわいいわよね。

まだまだ手がかかるけどすぐに黒猫ちゃんと遊べるようになるわよ。仲良く遊んであげてね」 

 「うん」

黒猫ちゃんはそう言うとつまらなそうに家の外に出ました。

つまんないの。お母さんは仔猫のことばっかりでちっとも私と遊んでくれない。せっかくの春なのに」

「なんや賑やかな声するなあ」

そう言いながら空からドラゴンが降りて来ました。

「よう、あんたはいつぞやの迷子になってた黒猫ちゃんか?大きなったなあ。ひとりぼっちでつまらなそうにしてからに。まさかまた迷子になったんちゃうやろな」 

「あっ、あの時の龍だ!」

 「龍やのうてドラゴンさんやで」

「ドラゴンさんあのね。お母さんに赤ちゃんが生まれて忙しくて全然構ってくれないの。一緒に桜を見に行く約束してたのに。このままじゃ桜も散ってしまう…」

「赤ちゃん生まれたんかいな。それはめでたい!どれどれわしにも赤ちゃん見せてもろてかまへんか?」

「うん、いいよ」

そう言うと黒猫ちゃんは三毛猫母さんを呼びに行きました。  

あらあらあなたはいつぞやの…」

「ドラゴンさんだよ」黒猫ちゃんが答えました。 

 「あの節は大変お世話になりました」

「いやいや大したことしてまへん。それより赤ちゃんが生まれたそうで。おめでとうさん」 

ありがとうございます。今やっと寝たところです」

「そうかいな。ほんならちょっとわしが見ときまっさかいに、黒猫ちゃんと息抜きにお花見でもどないです?丘の上の桜ちょうど見頃でっせ」

いやいやそんなこと頼んじゃ悪いです」

「なーに子守りの一つや二つわしに任しときなはれ。こう見えて子守りは得意中の得意ですから」

「行こう、お母さん…」

黒猫ちゃんに誘われて、三毛猫母さんはドラゴンさんに子守りをお願いすることにしました


2匹が出かけてほどなくすると、仔猫達が次々と起きて泣き出しました。

「おやおやもう起きたんかいな。ほうらドラゴンさんやでー」ドラゴンが近づくと仔猫達は益々泣き出しました。

困ったドラゴンは一生懸命にぐるぐると飛んで回ってみたり、水晶を光に当ててキラキラさせてみたりしていますが、仔猫達は一向に泣き止みません。ふと空を見上げると白龍が飛んでいました。

「おーい白龍!手伝うてくれ!」 

仔猫達を前に困っているドラゴンを見て白龍は焦りながら言いました。

「ぼ、僕は無理だ。青龍に頼まれた大事な用事があるんだ。すまないね」   

 「あいつ…逃げたな…」

そこへお散歩中の仔犬ちゃんがやって来ました。

「ドラゴンさん!こんな所で何しているの?」

「おお仔犬ちゃんええとこ来た!この子ら泣き止まへんでほとほと困っとんねん。仔犬ちゃん助けてくれや」

「わかったよ、ドラゴンさん!」 

そして仔犬ちゃんも一緒になってしっぽを振ってあやしたり、仔猫の頭を舐めてあげたりしますが、やっぱり泣き止みません。近くの木からそれを見て、

コウモリさんがクスクス笑っています。

「コウモリ今わろたやろ?お前もわろてんと手伝わんかい!」

いつもは悠々としているドラゴンの慌てる姿が面白いのか、コウモリさんは手伝わずに木にぶら下がったままクスクス笑っています。

「あはは、おもろいおもろい。これは見ものや。あのドラゴンがてんやわんやしてるなんて!仔犬ちゃん、がんばれー!」

そんな中、仔犬ちゃんが大きなバスケットを見つけました。

ドラゴンさん、これに赤ちゃんを入れて飛んでみて!」 

「これにか?まあやってみるか」

ドラゴンはそう言うと大きなバスケットに仔猫をみんな入れ、口にくわえるとそっと飛びました。優しく家の周りを飛んでいると、仔猫達はゆらゆらと揺れるのが気持ちいいのかウトウトし始めました。 

「いいぞドラゴン!あとひと息!」

いつの間にかドラゴンの背中に乗って一緒に飛ぶ仔犬ちゃんが偉そうにドラゴンに言いました。

なのにドラゴンはそれには怒らず、ゆっくりと嬉しそうに飛び続けています。

仔猫達のゴロゴロ音が聞こえドラゴンがそうっと地面にバスケットを下ろすと、仔猫達はみんな揃ってすやすやと眠りにつきました。

そこへ三毛猫母さんと黒猫ちゃんが帰って来ました。

ドラゴンさんお世話になりました。赤ちゃん達大丈夫でしたか?」

するとドラゴンはにっかりと笑いながら「おお、おかえり!みんな手のかからんええ子でしたで」

と言って仔犬ちゃんにウインクしました。黒猫ちゃんはドラゴンに嬉しそうに言いました。

「桜いっぱい咲いててとーってもキレイだったよ!」

それを聞いてホッとして急に溢れ出る疲れを見せまいとするドラゴンと仔犬ちゃんを見て、コウモリさんだけはひとりクスクスと笑っていました。

おしまい