先日年差クオーツに関する熱い記事群を発見してしまった私は、その充実した情報を咀嚼するために、結局さらに別の情報を探し求めることになりました。

 

 例えば、セイコーとシチズンの高精度クオーツ開発競争がどんな経緯を辿ったかが気になって、セイコーやシチズンのウェブサイトなんかを調べた結果、実は精度世界新記録を更新したクオーツ腕時計って4つだけじゃないかとか考えたりしました。

 

 今回は、それとはまた別のことを考えていたら、また別の興味深い資料を発見してしまったので記録しておこうと思います。

 

 今回気になったのは、セイコーとシチズンが、音叉型水晶振動子の出力を補正するためにどういう技術を開発したのかということ。オールドクオーツの名機たちが、それぞれどういう技術で年差を実現していたのかが気になりました。

 

 クリストロン メガが採用したATカット水晶振動子は、温度特性に優れていたものの電池寿命が短かったので、それに続く機種においては、セイコーもシチズンも音叉型水晶振動子を使って、その出力を補正することで年差レベルの精度を実現したようです。

 

 両社はそれぞれの独自の技術を開発していたようですが、そのあたりの状況について上述の熱い記事群の中では例えば2023年2月12日の記事に次のような一節があります。

この他、温度で抵抗値が変化するサーミスタを使った方法や、二つの水晶振動子を使った方法(現エプソンの独立発振ビート方式、現セイコーインスツルの並列接続自己補償水晶方式)などもありましたが、水晶振動子と制御ICの他、追加の部品が必要になるという欠点は共通しています。
それに対し、IC内蔵温度補償ではIC内にすべての要素を収めることで温度補償のない月差クオーツとほぼ同等の複雑さで年差を実現することが出来ます。

 なんだか色々と技術はあったけど最終的に「IC内蔵温度補償」が良いということになったらしい…ということはわかります。その、なんだか色々とあった技術というのがオールドクオーツに採用されていたはずで、そのあたりをもう少し詳しく知りたいと思いました。

 

 で、ネットを放浪しているうちに発見した資料が、産業技術史資料情報センターのウェブサイトに掲載されたこの論文(?)です。特にp.82から始まる「8.クオーツ腕時計の更なる高精度化」の中に、ドンピシャの内容が書かれていました。

 

 この論文(?)の嬉しいところは、各メーカーが開発した技術のあらましだけでなく、それら技術を搭載したマイルストーン的な腕時計の商品名や、そのムーヴメントの番号をキッチリ書いてくれているところです。図8.3、図8.6、図8.16、あたりを見比べることで、セイコーのツインクオーツと、シチズンのエクシードが、それぞれどういう技術を搭載していたかわかったような気になれました。

 

 それにしてもこの論文(?)、他の章にも興味深いことが書いてあったりなんかして、実に充実した内容。これまた要らぬ物欲を喚起してしまいそうです。

 

※写真はあんまり関係のないザ・シチズンの2000年モデルです。