転売ヤーを容認したとされるSNS投稿をされた某出版社にお勤めの方が、会社から”退職処分”を受け、上司がそれぞれ降格などの懲戒処分を受けたことについて、社労士として思うところを書いてみます。
通常、懲戒を行うには就業規則に記載がないといけません。
懲戒事由は限定列挙が原則で、それ以外の事由での懲戒はできないとされています。
※前各号に準じる等の項目はあろうかと思いますが、原則として「限定列挙」でなければ処分できず、もし就業規則に記載のない事由で懲戒を行った場合、裁判等で無効とされる可能性が非常に高くなります。
就業規則は通常社外秘となっているので直接見ることはできませんが、懲戒の条文にはどのように書かれていたのか気になります。
さて、くだんの退職処分ですが、懲戒解雇だったのでしょうか。
退職処分というぼかした言い方ですので、諭旨退職としたのか懲戒解雇としたのかわかりません。
どちらにしても一発退場を言い渡されたので、相当重い処分です。
懲戒解雇のような重い処分を行う場合、刑事事件で有罪判決を受けたとか、刑法などに違反するような重大な犯罪行為が明らかであるとか、飲酒運転をして事故を起こしたとか、相当に重い事由の時には懲戒解雇を言い渡すことがあるでしょうが、このSNS投稿はそれと同等に扱われたということでしょうか。
もしくは他にも懲戒事由があったとも考えられます。他の懲戒事由と総合して判断されたということです。
たとえば、無断欠勤の常習者であったり、ハラスメントの加害者で幾度となくけん責等の懲戒処分を受けていたなどで、それが積み重なり”退職処分”へとつながった可能性もあり、そうなると常日頃から言動に問題のあった社員であったかもしれないという推測もたちます。
※ちなみにこのSNS投稿により会社が損害を受けた場合は、会社はその方に損害賠償請求をすることができますが、これは懲戒処分を行うこととは別のことです。
いずれにせよ、1つのSNS投稿をきっかけに自分自身は職を失い、所属していた会社の世間的な信用を失い、自分の上司の人生の一部に影響を与えてしまったのです。
私は新人研修でSNSについても講義を行っていますが、社会人1年生を預かる身としては今一度気を引き締めて研修を行っていかないといけないなと思いました。
また各企業様におかれましては、懲戒事由は「限定列挙」が原則です。自社の就業規則の見直しをぜひ行ってください。
伊藤社会保険労務士事務所 | Facebook