ソフィアの街の酒場……ここは夕方近くになると、冒険者たちで賑わう。クエストから帰ってきたパーティがその日の疲れを癒し、また明日への力とするために……

その酒場に1人の刀使いがやってきた。タカトシである。ギルドsalviaのマスターである、彼の天流乱星は他のそれとは一線を画する。今日はメシを食いにきたわけではない。
「いると思ったよ、クリボー」
ややひきつり気味の表情で声をかけるタカトシ。当然である。1人でテーブルに座り、そこにこれでもかと並べられた肉に魚に野菜に酒……
「やあタカトシさん、一緒にどう?」
「いや、見るだけで腹一杯だよ、あいかわらずだな」
「食こそ俺の力の源ですから。ところでメシじゃないなら何か話があって来たんでしょ?聞くよ?」
タカトシは、クリボーの察しの良さに満足気な笑みを浮かべながら話し始めた。
「話が早くて助かる。実はな、リュアーク帝国の脱走兵が魔物化したらしくてな、うちに討伐クエストの依頼がきたんだが……」
そこでタカトシは続きをためらった。クリボーもさすがにその先が読めるわけではない。
「依頼がきたんだが?」
オウム返しにたずねる。
「うちの盾職がさあ、この前のレイドあったろ?あれでケガしちゃってさ。それで……」
タカトシの言葉をさえぎるように
「いいよ!手伝うよ!」
クリボーはふたつ返事。この人柄ゆえに彼を欲しがるギルドは少なくない。
「助かる!もういっそのことウチに入れよ。大歓迎だぜ!」
タカトシのこの言葉は冗談ではない。今までにも何度か誘いは受けている。しかしクリボーは……
「前も言ったけど、俺考えてることがあって、今はどこかに所属する気はないんだ」
「そっか、お前ならどこでもやってけるよ」
「うん、悪いね、たびたび誘ってくれてるのに」
「気にすんな!あ、肝心のクエストは明日出発だからな」
「わかった!報酬はタカトシさんのおごりで焼肉ね!」
「勘弁しろお……俺の財布空っぽになるわ……」

翌日……パーティを組むメンバーで待ち合わせ場所に集合した。タカトシ、クリボー、ゼノ、シルエスカの4名だ。ゼノ、シルエスカはタカトシのギルドメンバーである。クリボーも面識はある。大剣使いのゼノ、魔法使いのシルエスカ……彼女たちもトップクラスの冒険者だ。
「タカトシさん、このメンバーでないと討伐できないクエストってことは……」
わかっているが、確認のためといったような聞き方だ。
「そうだ。魔物化した脱走兵は帝国近衛兵だ」
「まじかよ!」
「ああ、簡単にはいかないだろうが、頼むよ」
タカトシはいつもの笑顔で話してはいるが、内心は穏やかではないかもしれない、そう思いつつも、
「わかった!任せてよ!」
クリボーも笑顔で応えるのだった。


「タカトシさん、ゼノさん!相手の後ろへ!シルさんは俺の後ろで詠唱を!時間稼ぐから!」
「おう!」「はい!」「わかりました!」
戦闘に入ってどれくらい経つだろうか……魔物化した近衛兵は他の魔物を引き連れていた。
キリがない……クリボーは相手の行動を阻害する技を持っている、それを使えば一気に踏み込めるのだが、距離が遠すぎる……シルエスカもスキを見て大魔法フィナウを狙っているみたいだが、あれは詠唱時間が長い。タカトシ、ゼノは目の前の魔物を倒していくものの、前に進めているかというと……
「これじゃ、ジリ貧か!とりあえずは……」
「ガーディアン!」
クリボーは敵の注意を自分に引き付け3人にスキを作るように試みる。それは成功だった。しかし、数が多すぎる!このままでは我が身が持たない!
(何か、何かないか……諦めるにはまだ早い…)
『己の生命を燃やせ!道を作れ』
「何だ?誰だ?」
突然目の前にまばゆい光が落ちる。そして、それはクリボーの体に吸い込まれていく……
『我は大地の精霊ノーム。汝に力を貸そう』
「精霊!マジで実在したのか!って、そんなこと言ってる場合じゃないか!」
クリボーはその右手に力を込める。その右手には光が集まり始めた。迷わず前に放つ!
「チャリオット!」
一直線に放たれた光の筋は魔物たちを吹き飛ばし、魔物化した近衛兵までの道を開いた。
「タカトシさん!」
クリボーが叫ぶやいなや
「おう!縮地!天流乱星!」
タカトシの抜刀術が近衛兵に炸裂する。光の線に切り刻まれた近衛兵は魔素となり空へと消えていった。首魁が打たれたことで、他の魔物も空へと消える……
「終わったあ……」
ボロボロの体のクリボーは、その場に大の字で倒れ込む。
「クリボーさん!」
側のシルエスカが心配そうな顔で声をかける。
「腹減ったあ……もう動けん」
「お前なあ、空気読めよ!」
タカトシの一言にゼノとシルエスカは大笑い。
とにかく無事に終わったのだ……


ソフィアにたどり着いた4人は各々帰途につく。
「タカトシさん、俺決めたよ」
クリボーは突然言い放つ。
「なんだよ突然。何を決めたんだよ?」
「俺行きたいギルドあったんだ、でも足引っ張りたくなくてさ、迷ってた……」
「そっか、どこに行くんだ?」
「at homeへ!」


クリボーが「ソウルハンド」と呼ばれ、at home四柱の1人となるのは、この後のおはなし……


※この物語は全てフィクションです。場所名や人物名は同名なだけであり、実際のプレイヤーとは設定も異なります。