村沙(サキ)は、ギルドでもそつなくクエストをこなした。討伐任務に限らず、採集任務、捜索任務……多岐に渡って組合からも高評価を得ていた。おそらく軍人のときも様々な任務をこなしていたのだろう。淡々と依頼をこなしていく村沙ではあったが、リセは少し気にかかることがあった……

(なんか違うんだよなあ……)


その日、クエストを終えた村沙とリセは帰途についていた。

「今日のクエストは思ったより時間かかったな、早く帰ってメシにしようぜ」

リセはそう言い、討伐報酬の入った袋でお手玉しつつ歩いていく。

(今日は見れなかったか……)

リセは、このクエストに来る前のマルスとの会話を思い出していた。

組合にて……

「リセ、村沙の力はいつも持ってる剣にあると思うんだ」

「え?でも、あいつあの剣は持ってるだけで使ったことないって言ってたぜ」

「多分だけど、あの剣は村沙のものじゃないんだよ、あの剣から別の人の想い?みたいなものを感じるんだ」

「精霊が教えてくれてるってか?」

「うん、でもねえ、村沙自身が気づいてないっぽいんだよねー、その声に……」

「そればっかりは本人の問題だからな、俺たちにはどうしようもねえやな」

………………

リセも何となく気づいてはいたが、深入りすることではないだろうという判断のもと、様子を見るに留めていた。

「リセ、聞いてんの?」

村沙の声でリセは思考が一旦止まる。

「お、おう、すまん、考え事してた」

「しっかりしてよねー、リセとはまだ勝負ついてないんだからさ」

「は?まだやるつもりだったのかよ!」

「当たり前よ!あれはお互い本気じゃなかったし!」

村沙は珍しく声を大にして言う。リセは少し考え込む表情をしてから答える。

「そうだな……村沙がちゃんと剣を使いこなせるようになったら本気で相手してやるよ」

当然村沙はこの言葉の真意なんかわからない。

「は?剣使ってるじゃない!」

何言ってんだコイツ?とでもいいたげな顔でリセを見る村沙……それを気にせずリセは、

「ちげえよ、そのもう一本の剣だよ」

「………………!」

言葉にならない言葉とでも言うべきか、村沙は何も発せなくなり、驚愕の表情を浮かべる。

「この剣は……使えないのよ……」

村沙は大切な物だと言わんばかりの扱いで剣を手に取り、鞘から引き抜いて見せた。

「これは私の剣じゃないのよ……」

剣を眺めながら村沙はつぶやいた。が、リセはそれを最後まで聞かずに言葉を発する。

「村沙、お客さんだ」

村沙は自分の剣を抜いて構えなおす。周りには、赤黒いプロテクターを身につけた集団がいた。

(帝国軍特殊部隊暗部!まさか!早すぎる!)

集団は一斉にリセと村沙目がけて間合いを詰めてくる。だが、帝国軍特殊部隊とはいえ、この2人相手では部が悪すぎる。目の前の草を薙ぎ払うかのように2人は兵士を倒していく。そこへ、

「全員退け」

低く、芯の太い声が響き、兵士たちは間合いを取って離れていく。その兵士たちのうしろから現れた男。

「久しいな、サキ」

「オルンラーフ隊長!」

サキ=村沙は驚きを隠せない。リセは察した。

(なるほど、帝国軍特殊部隊の出身だったか……)

「まさか、こんなところまで逃げてきていたとはな、どうりで部下たちが捜索にてこずるはずだよ」

「私はもう戻りません」

「ならば部隊の掟はわかっているな?」

村沙、オルンラーフ両名ともに剣を構える。リセも加勢にと思ったが、周りの兵士たちに囲まれていて、そちらを片付けねばいけなくなりそうだ。

村沙とオルンラーフは同時に、

「神速の捌手!」

両者に光の帯がまとわりつく…青…黄…赤…その瞬間、2人の間合いはゼロ距離になって、2本の剣はぶつかっていた。が、片方は弾き飛ぶ。村沙だ。

「ぐっ、が…はっ…」

村沙は何とか耐えている。オルンラーフはそれを無表情で見ながら、

「サキ、お前に剣を教えたのは誰だと思っている?このオルンラーフ、女の細腕に負けるような剣は持ち合わせていないぞ!」

オルンラーフはゆっくりと歩を進め、距離を詰めてくる。村沙は歯を食いしばる、しかし、

(だめ、速さは互角でも力が違う!押し切られたら負ける!でも、どうすれば?)

「アスカ…私は生きたい!」

『サキ…私の分も生きて…さあ、立って…』

「アスカ!」

村沙は周りを見渡すがアスカの姿はない。気づいたのはリセだった。

「村沙、剣を取れ!」

見ると背中の剣はほのかな光を帯びている。村沙はそれを左手に取る。

「アスカ!私はあなたと生きるわ!」

2本の剣を構え、村沙はオルンラーフを迎え撃つ。

「サキ、アスカのところへ送ってやろう」

一気に詰めてくるオルンラーフ。その瞬間、村沙は2本の剣を同時に振り下ろす。その光刃は十字の光を描き、オルンラーフの大剣をくだき、吹き飛ばす。

「シャイニングクロス…アスカが残した技よ、オルンラーフ隊長、アスカはあなたを超えたのよ」

2本の剣を納め、天を仰ぐ村沙……

(アスカ、ありがとう…)


リセも片付いたようで、刀の血を拭き取りながら村沙に近づいてくる。

「言ったろ?剣を使いこなせって」

ニヤリと笑うリセに村沙は

「わかるわけないじゃない、そんなの!でも、これで勝負してくれるのよね?」

と笑顔を返す。リセは少し考えるしぐさを見せ、

「いいぜえ、ただし条件がある!」

「なによ?」

「at homeのギルドメンバーになれ!そしたら、いつでも勝負してやる」

「望むところよ!」


その後、村沙は双剣使いとして、名を馳せることになり、彼女の扱うシャイニングクロスは他の双剣使いとは異なることより『双光の剣士』のふたつ名がつけられる。しかし、その光がサキとアスカの2人のものであることを知る者は少ない。