「ついにきたわ、ソフィアの街!ここで私は新たな人生をスタートさせるのよ」

サキは生き生きとした表情で誰にともなくつぶやいた。リュアーク帝国特殊部隊.......帝国のためなら何でもやる、そんな部隊のエースアタッカーであった彼女は、自分の人生を求めて、命をかけて帝国を脱出してきた。

(アスカ……あなたの分まで生きるわ……)

2本の剣のうち片方に目をやるサキ。1本は使うためのものではない。アスカの分身である。サキの妹、アスカ……過酷な任務の犠牲となった彼女には墓すらない……この剣だけが彼女の存在を語るものなのだ。



冒険者組合に向かうサキ。登録作業の途中で逡巡する……

(帝国の目を逃れるためには、この名前ともおさらばする必要があるかもね……)

登録名、村沙……東の方で使われる文字で新たに冒険者として生きていく決意をする。

「ギルドはどちらかに所属されてますか?」

受付からそう問われて聞き返す。

「所属するものなの?」

「依頼はギルドを通すものもありますので、仕事は得やすいかと思いますよ、特に所属されてないなら、いくつか紹介することもできますが?」

そんなやり取りに割って入ってきた者がいた。

「相当な使い手とみた。ウチでやってみないか?」

「あなたは誰?」

「ああ、すまない。俺はリセ、ギルドat homeに所属する冒険者だ」

腰に刀を差す若者、放つ気配……全てが高いレベルにあることがわかる。だが、

「悪いけど、あなたの腕を試してからでいいかしら?」

あえて吹っかけるサキ、そんな言葉にリセは感情を表にすることなく、

「いいぜ、納得いくまで付き合うよ、ついてきな」

奥に入っていくリセについていく村沙。そこには青い衣に杖を持つ魔導師が立っていた。

「マルス、ちょっと演習場貸してくれ」

「リセか、何する気だよ」

(聞いたことある、水楓の魔導師マルス……ソフィアの要人リストに載ってた、このリセという男、何者?)

「このお姉さんをスカウトしたんだけど、腕を見たいらしくてな」

「おいおい、手荒な真似すんなよ」

「大丈夫だよ、このお姉さん、只者じゃねえみたいだから」

ニヤリと笑いながら村沙に視線を送るリセ。ため息をひとつついたマルスは

「わかったよ、カギはまた持ってきて」

と一言残してマルスは執務室に消えた。リセは村沙に向き直り、

「あれ、うちのサブマスター、名前は……有名人だから知ってるか……」

「ええ、水楓の魔導師マルス……彼のギルドに所属してたのね」

「まあな、色々あってね。さ、やるか!」

演習場の真ん中に立つ2人……互いの距離は7m程度だろうか……普通であれば、互いの剣は届かない。だが、この程度の距離は大した距離ではないことを2人ともわかっていた。沈黙、いや静寂と言うほうが正しいかもしれない。実際の時間にして14~15秒というところだろうか……その後、ほぼ同時に抜剣し、

「アクセルブレード!」

「縮地!一閃!」

中央付近で互いの剣がぶつかり、火花かと思うほどの光が放たれる。そのまま連続で剣撃をぶつけあう2人、一瞬リセが隙を見せてしまう、

「もらった!アステュート!」

村沙は勝負をかける!しかし、リセは

「禍断ち!」

すかさずそれを切り返し、刀を村沙の首筋にたてる。

「ま、こんなとこだろ。これ以上お互い手の内は見せたくないだろうしな」

「本気ではないということね……」

村沙はニコリとしながら答える。

「そりゃお互い様だろ?」

今度はリセがニヤリとする。そして右手を差し出し、

「よろしく頼むぜ、村沙」

村沙もその手を差し出し、

「こちらこそ、今度は勝つわ」

リセはちょっと複雑な顔で、

「女性とはあんまりやりたくないんだけどなあ……」

「あら、女性扱いでなくて結構よ、慣れてるから」

「まあ気が向いたらな」




マルスの執務室……リセは事の顛末をマルスに話しに来ていた。

「なるほど、軍の人間だと、リセはそう言いたいわけか?」

マルスはあわてる様子もなく、リセに訊ねる。

「ああ、傭兵にしては剣が綺麗すぎるし、冒険者にしては殺気が強すぎる。十中八九、軍人だ」

リセの傭兵としての経験値から感じたものだろう。だが、マルスはさほど困る様子を見せることなく、

「ま、いいんじゃない?今は軍人ではなく、冒険者なわけだし、個人のことに深く触れるのはマナー違反だからね」

「そうだな」

「まあ、気になることは別にあると言えばあるが……」

マルスは言葉を濁す。

「なんだよ、ハッキリしねえな」

リセがすぐに返す。

「んー、まだ完全に見えたわけじゃないんだよね、でも、何か持ってるよ、彼女」

「まさか!精霊使いだってのか!」

さすがにリセも驚きを隠せない。しかし、マルスは首を横に振る。

「精霊ではないよ、それに近いものではあるけどね、そして彼女はそれにまだ気づいてないね」

「そうか、本来の力はまだ使えてないってことか」

「たぶんね、まあ気にかけてやって」

「なんで俺が?」

リセは続けて驚く。

「いや、だって女性の扱い慣れてるでしょ?」

マルスは悪びれずに答える。ある意味、悪意があるやつよりタチが悪い……

「わーったよ!気にはかけとく……」

めんどくさそうな顔をしつつ、リセは執務室を出て行った……




後編に続く……



※この物語は、全てフィクションです。場所名や人物名は、同名なだけであり、実際のプレイヤーとは異なります。