「アトリア、ガーディアンを!ナナミはクロスファイアの用意!合図したら発射!」

マルスの指示が飛ぶ。

「わかった!」「オッケー!」

アトリアとナナミは既に動きだしている。マルスはいつの間にか周辺にサンクチュアリを張っている。

「ナナミ!」

マルスの合図とともにナナミのクロスファイアが魔物を一掃する。

「周辺索敵、反応なし」

「片付いたね」

マルスとナナミは周囲の警戒をしている。アトリアは座り込んでいる子どもに近寄り、

「もう大丈夫だからね、さあ一緒に街へ帰ろ」

(かっこいいなあ……ボクもこんなふうになりたい!)




3年後……at homeのギルドハウスの前に若者の姿があった。

(ついに来た!あこがれの冒険者!あこがれのギルド!)

霊邪は、おそるおそるハウスの扉を開ける……

「こんにちはー……」

返事がない……誰もいないのだろうか……?この時間だから、みんなクエストに出ている可能性もある。改めようかと振り返ったそのとき、

「!!!」

驚くのも無理はない。冒険者がひとり倒れていたからだ。霊邪はあわてて近寄り、声をかける。

「大丈夫ですか?」

倒れていた冒険者はうっすらと目を開ける。

「んあ?」

(あれ?この人もしかして……?)

ギルドマスターのアトリアである……

「んー、寝てたあ……人をダメにするソファやばいわあ……」

「………………」

霊邪は言葉を失う。いきなり目の前にあこがれのギルドのマスターがいるということと、昼寝していることの二重の衝撃である。

「あれ?君見かけない顔だねえ?クエストの依頼か何かで来たの?」

アトリアの声に意識を戻される。霊邪はおそるおそる返事をする。

「あ、あの……れ、霊邪と言います。その、ギルドに冒険者として入れてほしくて……」

見れば彼は背中に槍を持っている。その漆黒の槍は耀いており、手入れされていることがわかる。

「そっか、入団希望か。冒険者組合で手続きは済ませてきてある?」

にっこりと微笑みながらたずねるアトリア。

「は、はい。そ、それでギルドには……」

不安そうな顔の霊邪。当然である、ここに入るために自分は冒険者を目指したのだ。もし断られたらどうすればいいのか……

「んー、とりあえず、一緒にパーティ組んでクエストやりに行こっか!」

「え?クエスト、ですか?」

「うん、だって、君のことよく知らないから。とりあえずパーティしよう!」

(入団試験みたいなやつかなあ……緊張するなあ……でも、頑張らないと!)



30分後、霊邪はパーティを組んでいた……

アトリアが連れてきたメンバーを紹介し始めた。

「とりあえず紹介するね、こっちの美人さんがナナミ、うちのサブマスター」

(知ってる……あの時の人だ)

「それから、この優男がユユ、同じくサブマスター」

「アトリア、優男って……どーなの、それ……」

ユユは微妙な表情をしている。が、アトリアは構わず続ける。

「最後に、この大っきい人がクリボーね、この人もうちのサブマスター。あとマルス大先生がいるんだけど、今日は組合のほうに行ってていないの」

「アトリア、大っきい人って雑な紹介すぎない?それにマルス大先生って……」

(マルスさん……今日はいないのか……)

「いいじゃない、お堅い紹介してもしょーがないでしょ?」

アトリアはにんまり笑って答える。

「まあ、昼寝してるとこを客人に見られるくらい気の抜けたギルドだからなあ……」

やれやれと言った顔でユユが話しだす。

「寝てないもん!」

ムキになって答えるアトリアだが、

「寝てたな……」

クリボーとナナミに言われて、アトリアは言葉を失う。話を変えようとアトリアは霊邪に振る。

「とりあえず霊邪くんも自己紹介お願い」

3人の視線が霊邪のほうに向いていることに気づき、霊邪はあわてて自己紹介を始める。

「れ、霊邪です。えと、at homeに入りたくて……それで冒険者になりました。槍使いです」

「おおー、槍!かっこいいよねー」

ユユが目をキラキラさせている。

「ユユ、霊邪くん怯えてるよ?」

ナナミが止める。

「とりあえず、討伐クエスト一緒にやってみようと思うんだ。3人ともいいかな?」

アトリアはサブマスター3人にたずねる。

「OK!」

3人は即答する。



「今回のクエストは、この海岸に出る魔物の討伐みたい、雑魚も狩りながら親玉探そう!」

アトリアはそう言って進みだした。ドゥシア海岸、砂浜の広がる非常に美しい海岸で、夏には水浴びにくる人たちで賑わうところだ。今は水浴びの季節には少し早いので人はいないが、魔物がいるとなると一般人が襲われる可能性がある。早々に片付けねばならない。

雑魚を狩りつつ、探索を進めるパーティ。霊邪はあらためてその凄さを実感していた。

(す、すごい。みんな強い!それだけじゃない、パーティってこんな戦い方ができるんだ!)

アトリアたちのパーティ戦は連携速度が尋常ではなかった。互いの次の動きを知っているかのようにカバーがあり、攻撃が重ねられていた。

憧れ……とともに不安……霊邪にはそれが同居していた。

(どうしよう、ついていけてない……やっぱりギルドに入るのは早かったのかなあ……)

そのとき、海から何かが現れ、アトリアたちに攻撃を浴びせた。

「サンクチュアリ!」

アトリアが展開した魔法陣でからくも防げた。アトリアはマルスにこの聖魔法を教わっていたらしく、使用可能になっていた。

「ピステウスだね、やっかいなことになる前に倒しきろう」

クリボーが全員に声をかける。そして、全員が距離を詰めようとした瞬間、ピステウスは衝撃波を発生させる。

「!!」

「ちょっ、これヤバすぎない?」

さすがにナナミも驚いている。

「全方向かよ!」 

ユユは半分キレ気味である。

さすがにこれは被弾を覚悟しなければならないとアトリアも悟ったらしく、

「みんな私の周りに集まって!サンクチュアリで耐えて、その後に総攻撃しよう!」

全員が魔法陣付近に集まっていくそのとき、霊邪の目に何かが見えた。

(まさか!人?こんなところに?)

それはクリボーの一言で確信となった。

「アトリア、あそこに子どもがいる!」

「ええ、今からじゃ間に合わないよ!」

メンバーが話をしているとき、霊邪は別のことを考えていた。そして、

「ボクが行きます。衝撃波は本体を倒せば消えるはずです。あの子に届く前に倒しきります!」

「危険すぎるわ!」

アトリアもさすがに焦っている。だが、霊邪は続ける。

「3年前、ボクは皆さんに救われました。そして、皆さんみたいになりたくて冒険者を目指しました。あの子は3年前のボクです。今度はボクが助けたい!」

「アトリア、これはダメね」

ナナミが呆れたように言う。

「うん、完全にうちの毒に侵されたな」

ユユもニヤリと笑いながら答える。

「はあ、しょうがないわね、いいこと?霊邪くんは大切なギルドメンバーなんだから、あなたもちゃんと生き残らなきゃだめよ?」

アトリアも諦めたようだ。

(え?今ギルドメンバーって……)

霊邪は言葉にならない……そんな霊邪に4人の冒険者は笑顔を向ける。

「行きます!」

霊邪は前のみを見て目標を定める。

「神速の捌手!」

瞬間的に速度を上げ、霊邪はピステウスを目指す。だが、その前の衝撃波をかわさなければ、ピステウスには届かない。

「やらなきゃ!みんなの期待に応えるんだ!」

「ダイブインパクト!」

衝撃波が当たる寸前、霊邪はすり抜けるようにしてそれをかわす!コンマ1秒でもタイミングがずれれば、確実にやられていたはずである。

(かわせた!今までうまくいったことなかったのに!そっか、これがパーティ……)

「よし!いくぞっ!」

「ドラゴントゥース!」

一直線に伸びた霊邪の漆黒の槍は、ピステウスに突き刺さり、そのままピステウスを突き抜けた。

ピステウスの断末魔とともに衝撃波もすっと消え失せていく。霊邪が振り返ると、そこには子どもと4人の冒険者が立っていた。

「霊邪くん、3年前のあの子がまさか冒険者としてウチに来るとは思ってなかったわ、ようこそat homeへ」

アトリアが笑顔で声をかける。と、そこにユユが割って入る。

「霊邪、ギルドメンバーとして最初の仕事だ!」

「?」

ユユは無言で子どもを前に出す。

(!!)

霊邪はにっこり笑いながら、

「もう大丈夫だからね、さあ一緒に街へ帰ろ」




※この物語は全てフィクションです。場所名や人物名などはただの同名であり、トーラム内のプレイヤーとは別物です。